消防労組の労使紛争、ようやく終結

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2003年9月

昨年5月から長期にわたる労使の対立を続けていた消防労組(FBU)は、6月12日、グラスゴーで臨時の大会を開催し、政府及び自治体側が提示していた昇給案の受諾を可決した。

受諾案の内容

FBUは当初、年収3万ポンド、40%の賃上げ要求を掲げていたが(本誌2003年2月号参照)、今回受諾した結果は、16%の賃上げとなった。まず4%の賃上げがなされ、11月に7%、残りを来夏に引き上げる。これにより年収が2万5000ポンドとなる。

また、昇給だけでなく、勤務体制の近代化を行うことについても今回の受諾案に含まれており、残業の導入、ファイアーステーションの夜間閉鎖の導入などが含まれる。

労使の対立の経緯

今回のFBUの労使紛争は、当初、圧倒的に組合側が有利であった。世論調査でも国民の同情をかっていたのは自治体側ではなく組合側であったという。対照的に、政府及び自治体側は混乱の様相さえみせていた。

ところが、11月にFBUが全国ストに突入したときに情勢が一変した。ストをカバーするために出動した軍隊が、より古い装備にもかかわらず、混乱もなく事態を無事にカバーできたことを受け、政府側が自信をもって交渉にのぞむことが可能となったのである。

6月12日のFBUの大会で、アンディー・ギルクリストFBU書記長は、今回の政府及び自治体側からの昇給案について、現在において最善の妥結内容であり、この内容で妥結しない場合は条件がより悪くなるおそれがある、と組合員に対して受諾を説得した。

評価

労使紛争が延長された結果、政府と地方自治体側が、明らかに組合側より得たものが多かったとされている。また、他の公共部門の労働者がならうことになったかもしれない事例において政府が敗北せずに終わった、という見方もあり、他の公共部門の交渉に影響を与える可能性もある。

今回の紛争について組合側が勝利したと思うかという問いに対し、アンディー・ギルクリストFBU書記長は、「勝利か敗北かということではない。我々はメンバーの仕事が年収3万ポンドに値していると信じているが、しかし、私は、来年の7月までに2万5000ポンドに引き上げられるということは適切な合意だと思う。」としている。

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