消防労組、40%の賃上げ求め25年ぶりに全国スト

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年2月

全国の消防士3万人が2002年11月13日、40%の賃上げを求めて25年ぶりにストを実施した。さらに同22日からは8日間にわたるストを実施したが、自治体との交渉は02年内にまとまる見通しは立っておらず、労働党が97年に政権復帰して以来、最大の労働争議に発展している。消防労組(FBU)は03年1、2月にもストを実施すると予告している。

労使の主張

FBUは、70年代後半に導入された消防士の賃金決定方式が現在の経済社会状況を適切に反映していないとして、40%の賃上げを求めてきたが、政府は2年間で11%の賃上げ(02年=4%、03年=7%)を提示し、それ以上の引上げについては、勤務体制の改善を受け入れることを条件としている。

25年ぶりにスト決行

FBUは、勤務体制の改善は大幅な人員削減を伴う可能性があるとして政府案に反発。11月13日に48時間ストを、同22日からは8日間のストを決行した。スト期間中は、一部の消防士が勤務に就いたほか、約2万人の軍隊が代役を命じられ、半世紀も前の軍用消防車「緑の女神」が待機した。

その後12月に入り、FBUは11日と16日に予定していた8日間ストを中止して、仲裁機関Acasを交えて自治体と協議をおこなったが、それでも合意に至らず、FBUは1月28日と2月1日から2回にわたる48時間ストを実施する構えだ。

「消防レポート」は11%の昇級案

そうしたなか、政府の指示で将来の消防体制のあり方を検討してきたジョージ・ベイン卿は12月16日、最終レポートを発表した。同レポートは消防労使の対立の行方を左右するものとして注目されていたが、消防士側に不利な内容であるため、1月6日に予定されている労使交渉は紛糾するのは必至だ。

まず注目の賃上げ率についてレポートは、2002年11月にさかのぼって4%、2003年に7%を提案しており、FBUの要求している40%とはほど遠い。

ただ人員削減については、定年退職などによる自然減が今後3年間に3500人に及ぶと見込まれ、さらに採用を抑制すれば対処できると提案しており、強制的な人員削減の必要性については触れていない。

そのほかに、1.各地方の実情に合わせて一時金を出す権限を各自治体に与える、2.救急医療機器を使用できるように消防士に特別訓練を課す、3.パートタイム消防士に正規消防士と同じ訓練を課す-などを提案している。

他の公務員も大幅賃上げを要求

消防士が8日間ストライキを実施している最中の11月26日、大ロンドン市で教員や自治体職員が地域手当の増額を訴えて24時間ストライキを決行した。

インナー・ロンドンとアウター・ロンドンの教員地域手当はそれぞれ年間3105ポンドと2043ポンドだが、これを警官と同じ6000ポンド程度へ引き上げることを求めて、教員の2大労組である全国教員組合(NUT)と全国女性教員校長組合(NASUWT)がストを組織した。この影響で約1000校が休校になった。

また、最大労組ユニソンは、自治体職員の地域手当を年間4000ポンドに引き上げることを訴えてストを実施した。

こうした公務員による一連の賃上げ要求については、国内経済への影響を懸念する声があがっている。イングランド銀行(中央銀行)のエドワード・ジョージ総裁は、公務員の過度の賃上げ要求は、民間にも波及しかねず、インフレ圧力に結びつくと懸念を示している。

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