繊維・縫製産業の厳しい雇用状況

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年6月

1960年代の外資導入開始時から、タイのリーディングセクターであった繊維・縫製業がここ数年厳しい状況を迎えている。労働コストの上昇と、競争国である中国・ベトナムの台頭が原因となって、企業・工場の倒産・閉鎖、それに伴う失業者が増加している。同部門では労使紛争が生じている。

最近の繊維・縫製産業の労使紛争

中部パトンタニ県にある子供服製造のサン・サン・ニットウエア社は、2003年2月14日に、従業員300人を解雇し、工場を閉鎖したが、賃金と退職金の未払い問題が浮上している。従業員らは、経営側に従業員1人あたり3000バーツの支払いを求めている。

東北部ナコンラチャシマ県のパー・ガーメント社は、工場の移転に失敗し倒産に至ったが、約100名の従業員の退職金が未払いであるため労働省に従業員の救済を求めている。

また、香港資本の下着縫製メーカー、ギナ・フォーム社でも、組合幹部の解雇、派遣労働者の増加といった問題について、労使紛争が起きた。特に解雇された38人の従業員が、解雇の理由が不当との理由から国家人権委員会へ訴えをおこし、委員会は最終的に、経営側に従業員の再雇用を求めた。

経済危機後の同産業の大量失業者問題では、タイ・メロン社の長期にわたる労使紛争(本誌2000年12月)や、タイ・デュラブル社(本誌2000年9月)などがあるが、2005年のアセアン域内の貿易完全自由化に向けての、競争激化が原因となって失業・解雇、労使紛争といった問題が増加すると考えられる。

政府統計によると、同分野の輸出額は、2001年の526万米ドルから2.1ポイント減少の515万米ドルとなっており、同分野の企業数も減少傾向にあるといわれている。

好調な繊維企業も

一方、業績が好調な企業もある。バンコクに本社を持つ、トン・タイ社は、多国籍企業のナイキやリーボックといったブランド製品の下請け(Original Equipment Manufacturer: OEM)を行っており、同産業の中でも高い収益を上げている。同社の社長によると、労賃の安いタイ東北部へ工場を移転によるコスト削減、染色や織物業も含めた広範な事業展開などにより成功しているという。また、OEMだけに依存するのではなく、国内市場向けのオリジナルブランドの開発にも力を注いでいる点が他企業との違いだという。

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