縫製産業の大量解雇続く

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年12月

パトン・タニにある2つの縫製工場で、1000人以上の解雇者に対する補償金と給与の支払いをめぐって、労使紛争が2000年9月から続いている。

そのため、イラワット労働長官は、タイ・イリョウとタイ・イリョウ縫製株式会社を9月4日見学し、企業の財務状況と1236人の解雇に関する情報を集めた。

その結果、企業は6億バーツの赤字と、ここ3年の資金流動性の問題に悩まされ、閉鎖せざるをえないことが分かった。同長官は、このような自営業者は公共福祉局で借りられる融資限度額が500万バーツと定まっているために資金繰りに苦労していることを伝えた。

また、雇用局では解雇された労働者に対しての再就職の斡旋と、高齢で就職が不利と見られている労働者に対して、職業訓練を提供した。

タイ・イリョウ労組のアンポン委員長は、労働長官の解雇者に対する支援の動きに満足であることを述べた。

この2社の倒産は、スクリ・ポティラナンクル・テキスタイルの傘下にあるタイ・メロン・テキスタイルの2年前の倒産に続くものであった。

この解雇により同社の労組が「白い鳩の家」と名づけた解雇者の救済センターを設置し、新しい職探しへの支援を行っている。ナレー労組議長は、「政府の対応はいつも遅すぎる。私たちは2年前のタイ・メロンの倒産で、縫製業労働者の悲惨な結末を知らされた」と語っている。

9月28日には、同社の労働者約500人が、政府官邸付近でデモンストレーションを行い、その結果、労働者代表10人が、労働福祉局長と話し合いの場を持つことに成功した。チュアン首相は、使用者側に速やかな支払いと早期解決を求めたが、これに対して使用者側は、その余裕はないとコメントしている。タイの労働法は、使用者側は、解雇者に対して30日以内に補償金を支払わなくてはならないと定めている。

縫製会社タイ・クリエン(タイ・デュラブル)の労使紛争(本誌2000年9月号参照)も未だ解決を見ていない。5月からストや労使交渉が行われてきたが、経営者側が労働者の要求をすべて拒否、解雇された労働者は、解雇後、家庭の経済的な困難に直面しているという。労働者はなんの補償もなく、使用者と労働省の矛盾したコメントに当惑しているという。プラチャ労相は、解雇者全員に平等に10カ月分の補償金を支払うべきだと語ったが、使用者側は、3カ月分しか支払えないと主張、さらに200人の職場復帰の条件として、使用者側は、すべての労働組合員の解雇と、組合の解散、労働者の福利厚生の削減を挙げており、未だ主張は平行線をたどっている。

タイの経済発展を支えてきたとも言うべき労働集約的な縫製産業で、このような大量の解雇とそれに伴う一連の労使紛争が起こっていることに関して、チュラロンコン大学ラエ教授は、「政府は、労働者の現実的な問題を理解していない。解雇者の生活の困難さを見ようとせず、統計上の失業率ばかり見ていることが問題である」と語った。

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