連邦議会、閉店法改正案を可決

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年6月

クレーメント経済労働相(社会民主党SPD)は、就任直後から、小売業界を中心に経済界や消費者団体から強い要望のある閉店法改正による開店時間の延長に意欲を示してきたが、ハルツ答申実施法成立後、本格的な改正作業に入り、社会民主党(SPD)左派の反対を押し切って法案を提出し、2003年3月13日、小規模ながら同法の規制を緩和する改正案が連邦議会で僅差で可決された。

閉店法は、コール前保守中道政権末期の1996年11月に改正されて、1997年1月1日から施行され、現在に至っていた。現行法では、開店時間は全国一律に、月曜から金曜までは6時から20時、土曜は6時から16時、クリスマス前4週間の土曜日は6時から18時で、日曜は開店禁止とされている。

96年改正法成立後、1998年10月にシュレーダー政権が成立してからも、特にサービス業の進展で、小売業界・消費者団体などから度々開店時間延長の要望があり、与野党が政権を担当する幾つかの連邦諸州や自治体でも自由化の方向での議論がなされ、閉店法の完全撤廃から、日曜だけ規制してウィークデイを完全自由化するというものまで、様々な案が提出されてきた。また、6大経済研究所の一つであるミュンヘンのIfo研究所等も、独自調査をもとに、開店時間の制限に確固たる経済的根拠がないとして、自由化を提言してきた。

他方、小売業を管轄する統一サービス業労組Verdiは、合併前の商業・銀行・保険労組(HGB)と職員労組(DAG)以来、1. 96年の改正で売上増大・雇用創出に結びつかなかったこと、2. 競争の激化により女性を中心とする小売業雇用者の労働条件が悪化すること、3. 小店舗の店仕舞が生じることなどを理由に、同法改正に強く反対してきた。また教会は、日曜を安息日として休養に当てる宗教上の理由からも、特に日曜の開店には終始一貫して反対してきた(本誌2000年1月号11月号参照)。

このような中で、今回クレーメント経済労働相のイニシアティブで閉店法改正が連邦議会を僅差で通過したのだが、他のヨーロッパのキリスト教国の中でも閉店法に関しては保守的なドイツで規制が多少緩和された背景には、グローバル化の中の外国企業の進出等で外国人の数が多くなり、ドイツにおける休日のサービス業利用の不便さ指摘する声がジャーナリズムでも取り上げられているといった事情もある。

改正案では、土曜の開店時間が延長され、従来の6時から16時が、6時から20時までに変更された。ただ、日曜については文化的背景も考慮され、従来どおり原則として開店禁止のままに止まった。また、労組の要望で、従業員は1カ月に1回、土曜勤務を免除されることを請求し得るという妥協案が取り入れられた。

改正案に対しては、Verdiは、新たな雇用創出につながらず、正規雇用が減少する、従業員の労働時間が不利になる等の理由で相変わらず反対し、逆に野党や小売業界は規制緩和が不十分だとして批判しており、開店時間の規制を閉店法で全国一律に規制するのではなく、州の所管に委譲することを要求する幾つかの連邦州が今後連邦参議院でいかに行動するかが注目される。

ちなみに、ケルン商業研究所の調査では、調査対象となった消費者の92%が、土曜の開店時間延長に賛成している。

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