閉店法論議活発化

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2000年11月

税制改革法が成立し、シュレーダー政権の中道現実路線の次の山がリースター労相の提案にかかる年金改革に関する論議となった2000年8月、昨年以来問題となっている閉店法の自由化をめぐる議論(本誌2000年1月号[3]参照)が、諸政党対労働組合の対立を軸に再び活発になっている。

政党は、与党社会民主党(SPD)、野党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)ともに、ザールランド州(CDU)を除いて、その政権を担当する諸州で、閉店法の自由化の方向での変更を主張してきた。自由化の程度についてはヴァリエイションがあり、月曜から金曜までの開店時間の延長、土曜も含めた延長、完全な自由化等があるが、日曜については、教会の要求を考慮して開店しないという意見が多数である。

これに対して、小売業従事の雇用者を組織する中心労組である商業・銀行・保険労組(HBV)とドイツ職員労組(DAG)は、閉店法自由化に強く反対し、メーニヒ・ラーネHBV委員長は、閉店時間を延長した1996年の現行閉店法のもとでは、売上げも増えなかったし、予告された5万人の雇用創出も実現されておらず、逆に約25万人の正規雇用が失われたと述べている。また同委員長は、HBVとしては、閉店法改正の結果使用者側と争いになれば、ストライキをも辞さないと強硬姿勢を示している。この場合、立法に対して労組がストライキの権利をもつわけではないが、現行法が改正され、その結果として問題となる残業手当、日曜・休日労働手当等の増額について使用者と争いになれば、労組のストライキの決行が可能となるのである。現行法のもとでは、ウィークデイの18時30分から20時までは手当が20%加算され、20時以降は40%加算される。土曜については、14時から16時までは20%、16時以降は40%の加算になる。

国民一般は、閉店法の自由化論議に賛成するのが多数で、『ビルト』(Bild)紙等の委託によるDimap研究所の調査によると、回答者の59%が論議に賛成で、反対は40%だった。東独地域では、自由化論議に賛成が64%、反対が34%だった。

連邦政府は8月7日、従来どおり現行法を現時点で改正する必要を認めないとしたが、閉店法論議を退ける趣旨ではなく、ミュラー経済相は、日曜の開店はより制限的に扱うが、それ以外の閉店法の自由化についてはHBVとDAGと話し合いたいと述べている。

このような中で、各州政府の経済省次官が、8月28日のドレスデンでの会議で、圧倒的多数で開店時間の延長を求める合意に達し、連邦参議院を通して法改正を実現する意向を発表した。合意内容は、以前から有力視されたベルリン市の案に基づくもので、主な内容は以下のとおりである。

  1. 月曜日から金曜日までは、6時から22時まで開店しうるものとする。
  2. 土曜日は、6時から20時まで開店しうるものとする。
  3. 日曜・祭日は、年間4日間のクリスマス期の特別日(この日は12時から18時まで開店できる)を除いて、閉店する。ただし、温泉等の行楽地や療養地では、従来どおり日曜日の買い物を認める。
  4. 市の中心部の店舗だけ開店時間を延長するという、立地による区別はしない。
  5. 連邦参議院(州政府代表で構成される)の発議によって、可能なかぎり2000年度中に法律として成立を期する。

HBVとDAGはこの連邦諸州の提案を、少数の消費者が夜間に買い物する自由を認めて、女性を中心とする約300万人の小売業従事の雇用者の労働条件を悪化させるものだと、厳しく批判している。逆に、ドイツ小売業連盟(HDV)は、ウィークデイの完全な自由化を認めなかったことを批判している。

なお、この合意は9月14日に連邦参議院の経済委員会に提出され、審議が行われる。

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