ガルーダ航空、タバコメーカーなど、組合の賃上げ要求とストライキ

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年4月

インドネシアの各企業労組は、2003年1月の賃金の改定(最低賃金に連動)に向け、数ヶ月前から労組との話合いを重ねていくが、年が明けても労使間での交渉が終わらないケースが多々見られる。2003年は、国営ガルーダ航空パイロットの賃上げ要求やタバコメーカー従業員の長引く賃上げ交渉で始まった。

国営ガルーダ航空パイロットの賃上げ要求

2002年の9月から経営者側との労使協定見直しの協議を重ねてきた国営ガルーダ航空のパイロットが、交渉決裂のため1月26日から全路線での運行を遅らせ、最終的には停止を行う前面ストに入る用意があると発表。

パイロット組合によると、同社のパイロットの給与水準は、近隣諸国と比べてきわめて低く、国内の民間の航空会社よりも低い場合さえあるという。現在の副操縦士の月給は430-1160万ルピア、機長は90万~2280万ルピアであるが、これは近隣諸国で言うと、タイ航空のパイロット3分の1~2分の1程度、ユナイテッドやキャセイ航空などと比べた場合、10分の1程度となる。

そのため、パイロット労組は副操縦士を2000万から30万ルピア、機長を400万から8800万程度に引き上げることを会社側に提示している。

しかし、会社側が提示する額は、前者が640から1220万ルピア、後者が1300万から2460万ルピア。経営側は、企業内での賃金格差が大きくなることが問題であるとして、労組の要求を飲まなかった。

そこで、労組は1月下旬からのストを決行すると数回宣言したが、1月30日にヤコブ労相の介入により、経営者とパイロット労組と3社で協議を行ない、2月上旬までに話合いで問題解決にあたることで合意に達した。

しかし、パイロット労組のアリ代表は、パイロットが求めているのは単なる賃上げではなく、国際水準に沿った給与システムの改革であると訴えているという。

国内最大のタバコメーカーで再びスト

東ジャワ州にある国内最大のタバコメーカー、グダン・ガラムの工場従業員約6000人が、1月26日から賃金の改善を求めてストライキを行っている。同社では、2002年の11月にも、女性従業員2万4000人がイドゥル・フィツリ(断食/ラマダン明けの祭)ボーナスを引き上げるようストライキを行っている。

今回のストの経緯は、1月に改定された賃金システムにおいて、給与の引き上げ幅が不公平であったことが原因であったとされている。3万~28万ルピアと、引き上げ幅に大きな差があり、給与が高い従業員ほど賃上げ額が大きくなる(一律○%の引き上げという賃上げ方法)システムは不当だとして、従業員全員、一律4万5000ルピアの引き上げ実施を経営者側に要求している。

同社では、2001年にも同様の賃上げストが起きており、経営者と従業員との話合いに問題があるのではないかということだ。

バンク・ヌガラ・インドネシア(BNI銀行)にて労使紛争、労相仲介

国営銀行のバンク・ヌガラ・インドネシア(BNI)銀行にて、438人の解雇をめぐる労使紛争が起き、2月3日ヤコブ労相が仲裁に入り、話合いでの解決を呼びかけた。

問題となっているのは、インドネシアの契約雇用に関する法律、1993年第2号労働大臣法令。この法令によると、契約社員の雇用期間は最長2年、1度だけ1年間の雇用期間延長が許されている。そのため、3年目以降もその契約社員を雇いたい場合には、正社員として再契約をすることが義務付けられている。

しかしBNI銀行では、438人の契約社員の契約期間を毎年更新し、10年間雇用してきた。従業員らは、正社員への移行のない雇用形態に不満をもち、ストも辞さない構えであったという。

しかし、ヤコブ労相の介入により、最終的には両者での話合いの協議の場を設け、今後の契約や雇用形態について話し合うことで決着した。

インドネシアではこのような契約社員が非常に多い(詳細は本誌2002年7月号の石油・ガス部門労働者の例を参照)。日系企業でも、工場に於ける単純作業員などと短期的な雇用契約を結ぶ傾向が近年特に強まっている。

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