労災件数、世界でワースト2位、対策が急務

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年4月

労働法の不備さと、安全衛生に関する法制度の欠如のために、毎年数百万の労働者の命が危機にさらされている。インドネシアでは、特に危険物を取り扱う労働者に対する安全設備や装置が不十分であることが明らかとなった。

労災事故の多発は、規制の不在、経済状況が原因

インドネシア健康安全委員会のスコジョ委員長は、1月10日、2002年末の統計で、全国1万企業のうち、労災件数0であったのはわずか80社しかなかったと発表した。

同委員長は、インドネシアでは職場の労働安全基準に関する最小限の規制も設けられていないために、労働者が安心して就業できないことが最も問題であると述べている。

国営の社会保険会社であるJamsostekには、職場の安全性に関する制度を設けるべきとの要請がすでに数万人の労働者からあったという。同社の調査によると、2002年前半だけで、労災発生件数は全国で5万000件。1日平均150件にも上る。2001年は10万4000件、2000年は9万8000件、1999年は8万2000件と、その件数は年々増加している。

不完全な法整備

職場の安全衛生に関する法律として19年第1号法があるが、この中での安全に対する規制は非常に緩く、経営者への罰則も、100万ルピア(約900米ドル)もしくは1ヶ月の禁固刑程度となっている。そのため、より罰則の重い、新しい法律の制定が望まれている。

一方、経営者は違った見方をしている。インドネシア経営者協会(Apindo)のハルヨノ代表は、労災の原因は労働者の不注意にあるという。

外資系企業の経営者は、また違った見解を持ち、インドネシアの経営者の安全にたいする認識不足であることを指摘している。

職場の安全衛生に関するシンポジウム開催

前出のインドネシア健康安全委員会は、1月13~15日まで、「ASEAN自由貿易地域(AFTA)に向けた労働安全衛生システムと生産性の向上」というタイトルで全国会議を開催し、職場の安全衛生に関しての問題意識を投げかけた。

この会議にはヤコブ労相も参加し、ILOの『世界競争年間統計』の2001年版によるとインドネシアの労災件数が世界2カ国中ワースト2位で、国際市場における生産拠点としての競争力の喪失に繋がるのではないかと危機感を持っていることを明らかにした。

ヤコブ大臣は、職場の安全衛生に対する制度が根付かない理由を、使用者・労働者の教育不足と、危険な職業だからといって退職できるほどの経済的余裕が各世帯にはなく、不況下で他の職を見つけることが困難なため、と分析している。

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