企業の半数がユーロ早期参加に消極的

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年4月

企業の約半数がユーロへの参加に消極的であることが、英国商工会議所(BCC)の調べで分かった。調査対象1000社のうち、5つの経済テスト(後述)を満たした場合でもすぐに参加せず、ユーロの行方をしばらく見守るべきだという企業が49%、可能な限り早期に参加すべきだとする企業は35%、決して参加すべきではないという企業は13%だった。

結果の見方

ユーロ参加推進団体の「ブリテン・イン・ヨーロッパ」は、この結果について、経済界はユーロ参加に前向きだとの見方を示している。3年前のBCC調査と比較して、早期参加を支持する企業の割合は13ポイント増えたのに対し、絶対反対の企業は4ポイント減っているためだ。

これに対し参加反対派は、政府が国民投票で勝つためには企業を見方につける必要があるが、今回の調査結果はそれが困難であることを示していると、逆の見方を示している。

いずれにしても政府は、企業や投票人がユーロ参加の是非について具体的な意見を持てるよう、ユーロの利益と費用について正確な情報を提供する必要性がありそうだ。

5つの経済テスト

政府は6月日にユーロ参加のための5つの経済テストの結果について発表する予定だ。5つの経済テストは、1.ユーロ圏と英国の経済構造が持続的に収斂している、2.ユーロ圏における経済の柔軟性、3.ユーロ参加が英国への投資に与える影響、4.ユーロ参加が英国の金融に与える影響、5.ユーロ参加が英国の雇用に与える影響――である。

テスト結果の予測については、エコノミストらの間でも意見が一致していない。たとえば1.の「収斂条件」については、数年の中期的なスパンで見れば確かに英国とユーロ圏の経済構造は収斂してきてはいるが、年末に向けて欧州中央銀行は利下げに、イングランド銀行は利上げに踏み切ることが予想されるなど、短期的には必ずしも両者の経済動向は一致していない、との見方がある。他方では、ユーロ創設メンバー国がユーロに参加した際よりも現在の英国の方がユーロ圏経済への収斂度は高いとする見解もある。

貿易産業省の立場は後者と同じだ。収斂条件についての懸念が先行するあまり、ユーロ参加によって得られる為替の安定性や物価の透明性という長期的利益を見損なってはならないと主張している。

運輸一般労組(GMB)も、製造業の雇用確保の観点から、早期参加を強く訴えている。自動車など製造業の雇用は、外資による対内直接投資に大きく依存しており、日産、プジョー、フォードなどの自動車大手は、ユーロに参加しなければ追加投資を見合わす可能性もあるとの意向を表明しているためだ(2003年2月号参照)。

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