男女間の賃金格差、拡大に転じる

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年4月

2002年の男女間の賃金格差は約19%で、15年ぶりに格差は拡大に転じた。民間調査機関インカム・データ・サービシーズ(IDS)は男性上級管理職の賃金が大幅に増大したためであると分析している(2003年1月20日)。

IDSは政府統計局(ONS)が2002年秋に公表した統計をもとに250の職種について詳しく分析した。

まず、ONSの統計によると、2002年の平均時間給は、男性が12.59ポンドで女性が10.22ポンド。女性の賃金は男性の賃金の81.2%で、2001年の81.5%と比較して、格差は0.3ポイント拡大した。1980年代から毎年約0.5ポイントのペースで縮小し続けてきた男女間賃金格差は、今回15年ぶりに拡大に転じたことになる。

しかし、IDSによると、上位5%の男性労働者を除いた場合、平均時給の伸び率は男性が4.4%であるのに対し女性は4.6%で、むしろこの場合は、格差は縮小している。つまり2002年に男女間の賃金格差が拡大した原因は、上位5%の男性労働者の賃金が大幅に増えたことによる。IDSが2002年10月に公表した調査結果によると、ロンドン証券取引所のFTSE100社の役員年収は160万ポンド(週3万1000ポンド)で、前年比10%増であった。

男女間の賃金格差を職種別で見ると、格差が最も大きいのは財務管理で、女性の賃金は男性のわずか59.9%に過ぎない。ついでマーケティング・営業責任者が6.9%、銀行・住宅金融が4.8%、コンピューター技師・情報処理が5.%、などとなっている。

高所得層と低所得層の賃金格差も拡大

同じくIDSが2月3日に公表した調査結果によると、高所得層と低所得層の賃金格差も拡大している。また賃金が平均を下回る労働者の数も増えており、2002年までに労働者全体の約3分の2の賃金が週平均賃金を下回っている。

レポートによると、こうした傾向は労働党が199年に政権復帰して以降むしろ顕著になっている。過去10年間の所得の伸び率を見ると、上位10%層は54%であるのに対し、下位10%層は45%にとどまる。

1999年に導入された最低賃金は、低賃金層の所得改善には確かに寄与してきたが、全体的な賃金格差の拡大傾向の歯止めにはなっていないようだ、とレポートは述べている。

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