SEATスペイン工場の移転計画

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

スペインの記事一覧

  • 国別労働トピック:2002年12月

スペイン独自の自動車ブランドといえばSEATだけで、それも80年代からはフォルクスワーゲングループの傘下にある。現在SEATの工場はスペイン第二の都市バルセロナ市から約30kmのマルトゥレイ市にあり、約1万5000人の労働者を雇用している。ところがSEATはこのほど、マルトゥレイ工場における小型車モデル「イビサ」の生産の10%(年間2万台)を、2003年1月からスロヴァキア共和国のブラティスラヴァ工場に移転することを発表した。

SEAT労働者代表の多数を占めるUGTでは、今回の決定によって直接雇用500人、間接雇用4500人に影響が出ると見ている。一方CC.OO.は、スロヴァキアへの生産移転はすでにとられていた決定であり、労働者側との交渉の決裂はこの決定を正当化するための口実にすぎないとして、会社側を批判している。実際、ブラティスラヴァ工場のコストはスペインと比べて5分の1であり、SEATが常々マルトゥレイ工場の生産性の低さや硬直性に不満をもってきたことを考えると、生産移転が会社にとって魅力的な選択肢であることは十分考えられる。

スペインでは98年より自動車販売台数記録を毎年更新し続けてきたが、今年に入って2月以降は低下の一途をたどっており、9月までの販売台数は対前年比で8.4%減となっている。以上のようなSEATでの動きも、こうした状況を背景に起こったものと見られる。93年の危機を脱して以来利益を出しつづけてきたSEATは、今年は始めて損失に転ずる見通しである。

2002年12月 スペインの記事一覧

関連情報