労働・社会問題省の「女性向」政策提案

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年12月

7月10日に行われた内閣改造で新たに就任したサプラナ労働・社会問題相は、95年よりバレンシア州首相をつとめていたが、もともと中央政界入りの希望を明らかにしていた。6月20日のゼネスト後間もなく行われた内閣改造ということで、労相ポストに関してはアパリシオ前労相がゼネストを回避できなかったための交代であったとの見方もされている。

夏休み明けの9月10日、サプラナ労働相は下院社会政策・雇用委員会で労働・社会問題省の政策課題について説明を行ったが、その中で、雇用創出政策も忘れないが、「労働」より「社会問題」の方を優先事項とすると語った。労相があげた具体的措置は身障者の雇用、高齢者対策、家族保護(子供の多い家庭を対象とした措置)、住居(若年者の住居取得への支援)、移民労働者の融合支援政策など、多岐にわたる。中でも特に目を引くのが、自宅で高齢者の世話をしている主婦に一定額の援助を支払うというもので、これは労相がバレンシア州首相時代に同州で導入した政策でもある。

スペインは世界で最も出生率が低い国であり、人口の急速な高齢化が問題となっている。全人口4000万人のうち、65歳以上の人口は700万人近く、そのうち約200万人が何らかの介護を必要としている。このような高齢者の世話は家庭の主婦が荷っている場合が多いが、それも女性の労働市場進出にともなって難しくなりつつあり、その結果現在老人ホームやデーケアセンターの需要が増す一方である。労相が発表した政策は、高齢者が家庭にとどまることで、まさにこうした施設への重圧を軽減することを目指している。

一方、出産した女性労働者を雇用する企業は、その労働者の社会保障企業側負担金を1年間にわたって全額免除、また大企業や工業団地での幼稚園設立を促進するなど、特に女性にとっての雇用と家庭の両立に向けた政策を発表した。

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