新国籍法の法案にジェンダー平等・児童の権利保障の観点を導入

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年12月

1950年憲法を基に作られた1958年国籍法が、時代の変化に対応した法律へと改正される予定だ。改正法案は、新入国管理法とともに、政府関係者やNGO団体に査定され、同法案が国民議会に提出されるまでの間、更なる検討が行われる見込み。

新法案では国際結婚をした女性とその児童の権利保障を盛り込む

新法案では、外国人男性がインドネシア人女性と結婚した場合、男性がインドネシア国籍になることを要求する一方、インドネシア人女性が外国人男性と結婚した場合には、インドネシア国籍を保有し続けることができ、その子供も18歳になるまでに両親のどちらかの国籍を選択すればよい。

司法・人権省のユスリル大臣は、この新法案で男女の平等の観点を導入したことを明らかにした。大臣によると、現行の国籍法は、1950年憲法を基に作られ、改正されたのも1958年で、法律の内容が時代遅れのものとなってしまったため、改正が必要と判断したという。政府は、原則としてius sanguinis(インドネシア語で「子供も親と同等の権利を保有する」という意味)の方針を貫く考え。

国際結婚に伴うトラブルの増加

法改正の背景には、国際化とともに増加した国際結婚及び離婚後のインドネシア人女性と子供の国籍の問題がたびたび問題となっていることが挙げられる。

外国人男性とインドネシア女性離婚した場合、その子供の親権や国籍が法廷で争われることも少なくなかったという。従来の国籍法の場合、子供は父親の国籍を持たなくてはならなかったため、離婚後子供は母親側に付くことが多い同国では、子供の国籍が問題となっていた。

更に、新法案では子供の2重国籍保有も認められる。また、政治的理由、婚姻、外国人への養子といった様々な要因によって、従来は非自発的に消滅していたインドネシア国籍を、本人が保有したいという意思があれば所有することができるという(特別なケースを除く)。

今後、ASEAN内の資本と人の移動が活発になるにつれ、域内の移民や労働力の移動が更に活発化することが予想される。そのために、従来の国籍法にあった曖昧な点を改正し、特に離婚後は経済的地位が相対的に弱くなるインドネシア人女性とその児童の国籍の確保を保証することでこれらに備えるという意図が見られる。

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