週35時間制改革法案の国会審議が始まる

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年12月

時間外労働枠の拡大と単一SMICへの復帰を定める週35時間制法案は9月18日に閣議で了承された後、10月2日から国民議会で審議が始まった。フィヨン社会問題相は3日に早くも、第1条を採択させたが、労働問題で左派陣営と決定的に対立することを避けたい政府が使用者側に不満な内容も盛り込んだだけに、与党内も一枚岩にまとまっているわけではない。

10月2日の審議が始まる直前にも、フランス企業運動(MEDEF)のセリエール会長は最後の奔走を試み、フランス民主連合(UDF)のモラン議員団長やフィヨン法案のスポークスマンを務める大統領与党連合(UMP)のガイヤール氏など、数人の与党議員を本部で行われた朝食会に招いた。この席で、セリエール会長が法案の修正に向けて最後の説得を試みたことは間違いない。

フィヨン社会問題相は新たな動きを警戒して、数時間後に、モラン議員や、アコワイエUMP副議員団長など、第一線の下院議員を昼食に招待した。同相の目的は、UDFが何も画策しないように説得することだった。モラン議員は、「我々は法案に賛成するだろうが、確実というわけではないと申し上げた」と説明したが、ある参加者は、「大臣はあまりに多くのことを修正すると、すべてを白紙にしてしまいかねないと主張した。政府は恐がっているようだ」と指摘した。

3日、社会問題相筋は冷静さを誇示し、UDFが修正案を提出するのであれば、投票には掛けないと言明していた。「それによってUDFは自らの意見を述べることが可能になる」というわけだ。修正案には、SMIC一本化までの期間の延長(2005年から2007年へ)、使用者が負担する社会保険料の新たな減免による時間外労働手当割増分の補償、法定枠を下回る時間外労働手当割増率を産業部門交渉の代わりに企業が決定できる規定などが、含まれていた。UMPは、政府を妨害しないために、「何も言わない、何もしない」戦術を一貫して守った。

議場ではモラン議員だけがこの修正案に賛成した。UMP所属議員は規律正しく、反対を表明した。しかし、与党議員全員が心から満足して政府の方針に従ったわけではない。30人ほどの右派議員で構成される作業グループ「企業世代」のメンバーであるブリュネル議員は不満を隠さなかった。「これではあべこべだ。右派政府が完全に左派的な内容の法案を提出している。SMICの一本化は確かに議論の余地がなかったが、社会保険料軽減の問題では、国の金庫が空っぽだという理由で、企業に不利な規定を定めようとしている」。ただしその後で、「私は労働時間をもう少し自由化するべきだと思うが、社会問題相が労使当事者と合意を結んだことは理解できる」と付け加えている。

一方、この法案は野党に評判がいいわけでもない。不満を持つゴルス議員(社会党)は、「フィヨン氏は法案の雇用への影響について正面から我々に答えることを拒否している」と失望を露わにし、共産党のグルメ議員も「週35時間制を廃止する意図」があるとして、与党を批判した。

左右両派の厳しい目を感じながら、政府は何とも難しい舵取りを迫られている。

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