政府、不法就労外国人の大量帰国による労働力不足で方針転換

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年10月

建設部門でインドネシア人の新規雇用を凍結してきた政府は8月10日、労働力不足を訴えていた建設業界の要請に応えて、同方針を転換すると発表した。不法就労者に対して政府が設けた7月31日までの自主帰国期間に出国した外国人は30万人以上。その大半を占めるインドネシア人に労働力の70%を依存している建設業界は深刻な労働力不足に見舞われていた。

インドネシア人の暴動事件で外国人労働者政策を見直し

政府は1月にインドネシア人労働者が起こした一連の暴動事件を重く見て、外国人労働者とくにインドネシア人労働者を削減するため、(1)インドネシア人の新規雇用を凍結すると同時に(メイドは除く)、就労期限の切れたインドネシア人に対し許可証の更新を行わない、(2)外国人労働者の就労部門を出身国ごとに振り分けて、インドネシア人労働者についてはメイドとプランテーション部門に限定する(注1)、(3)従来の近隣諸国以外にウズベキスタン、トルクメニスタン、カザフスタンなどからの外国人労働者の受け入れを認め、労働力供給国を多様化する、(4)これまで民間の斡旋業者が行ってきた外国人労働者の募集について、今後は労働力供給国と政府間協定を結び、それに基づいて行う-などの方針を打ち出した(本誌2002年45月号参照)。

不法外国人に自主帰国期間を設定

さらに政府は3月20日、国内に60~150万人いると見られる不法外国人について、改正出入国管理法が施行される8月1日までに出国すれば罪を問わないとする恩赦期間を設けて、自主帰国を促す措置を打ち出した。

改正入管法では、不法就労者とその使用者は、1万リンギ以下の罰金、5年以下の禁固刑、鞭打ち6回という重罰が課されるため、自主帰国期限の7月31日までに出国した不法外国人は32万2000人にも及び、なかでもインドネシア人は27万3244人に達した(他にインド人が約2万、バングラデシュ人が約1万7000人)。

建設業界で深刻な労働力不足、政府に方針転換求める

こうした一連の措置で最も深刻な影響が出ているのが建設業界である。同業界の就労人口約50万人のうち7割がインドネシア人で、その8割が不法就労者であるためだ。

建設部門が不法就労のインドネシア人に依存する理由として、(1)合法労働者を雇用しようとすると、就労許可証の申請から交付までに3~6カ月かかること、(2)就労許可証は、一定の使用者のもとで一定期間就労することを前提にしているが、建設業界では継続的な雇用を保障できないために日雇いが慣行であること、(3)インドネシア人は他の外国人と比べて技能水準が高く、文化的・言語的な障壁が低く、賃金が安いこと――などが指摘されている。

建設部門の使用者団体であるマレーシア建設協会(MBAM)によれば、政府の一連の措置により、労働力不足は40万人に達する可能性がある。生産性もすでに30%低下しており、このままでは60?70%まで低下する恐れもある。また、建築物の完成の遅れによる違約金の支払いが業界全体で1日に500万リンギに上っていることなどから、MBAMはインドネシア人の新規雇用を認めるよう政府に強く要望していた。

政府、インドネシア人労働者政策を転換

建設業界からの再三にわたる要請に応えて政府は8月10日、建設部門でインドネシア人を雇用することを認めると発表するとともに、すでに主要な建設業者に外国人労働者雇用許可証を交付したことを明らかにした。それ以外の業者についても、法人登記などの条件を満たしていれば、内務省に直接、許可証の申請が可能で、雇用人数についても原則として制限しない。

政府は1月に起きたインドネシア人労働者による暴動事件をきっかけに、同労働者を削減する一連の措置を打ち出してきたが、今回の決定により、早くも6カ月にして方針を転換したことになる。

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