暴動事件でインドネシア人労働者の雇用削減

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年4月

政府は、1月に起きた2度のインドネシア人労働者による暴動事件を重く見て、インドネシア労働者の雇用を削減するとともに、外国人労働者政策を見直す方針を打ち出した。

暴動事件

1件目の暴動事件は、1月17日にヌグリスンビラン州のニライ工業団地にある台湾系企業ホアロン・コーポレーションの繊維工場で起きた。同工場で就労する1800人のインドネシア人のなかに麻薬常習者がいるとの通報を受けた警察が労働者の麻薬検査に踏み切ったところ、労働者たちが反発、警察車両を破壊したり工場内食堂を荒らすなど、500人が参加する暴動に発展した。

2件目は、1月21日夜、スランゴール州シャアラムで起きた。インドネシア人労働者を中心とする二つのグループの間で、一方のグループにいたバングラデシュ人労働者をめぐってトラブルが起き、抗争に発展、2つのグループあわせて約70人が周辺の商店や飲食店に放火したり、物品を略奪した。

直後の政府の対応

1件目の暴動が起きた17日にマハティール首相は懸念を表明したのに続き、翌18日には、外国人労働者の受け入れに際してインドネシア人を「最後の選択肢」にすることになるとの意向を表明した。

2件目の暴動が起きた翌日の22日、首相はインドネシア人の雇用を見直す方針を再度表明。翌23日に、77万人いる合法外国人のうち57万人を占めるインドネシア人の数を半減するため、インドネシア人の新規雇用を凍結すると同時に(メイドは除く)、就労期限の切れたインドネシア人に対し許可証の更新を行わないと発表した。

外国人労働者政策の見直し

引き続き、インドネシア人を含む外国人労働者の今後の扱いを検討していた政府は2月5日、外国人労働者に対する依存度を軽減する方策として、出身国毎に就労可能な部門を割り振る措置を導入すると発表した(表参照)。


タイ、カンボジア、ネパール、ラオス、べトナム、フィリピン
ウズベキスタン、トルクメニスタン、カザフスタン インドネシア インド
製造業 × ×
サービス業 × ×
建設業 × ×
プランテーションなど農林水産業 ×
メイド × × ×

それによると、焦点となっていたインドネシア人については、プランテーションなど農林水産業とメイドに限定されることになった。また、社会問題を頻繁に引き起こしていたために、2001年2月以来、新規雇用凍結となっていたバングラデシュ人の雇用解禁は見送られた。

インドネシア人やバングラデシュ人労働者に依存してきた使用者に配慮して、政府は今回新たに、ウズベキスタン人、トルクメニスタン人、カザフスタン人の雇用を積極的に許可する措置を盛り込んだ。これら三カ国出身者は、製造業、サービス業、建設業での就労が許可される。

ただし、すでに就労許可証を取得している者(インドネシア人も含む)については、許可証の有効期間中は契約先の使用者のもとで就労でき、したがって当面は、工場や建設現場でインドネシア人の姿が消えることはない。

外国人労働者の募集を政府間協定方式に

さらに政府は2月6日、これまで民間の斡旋業者が行ってきた外国人労働者の募集について、今後は労働力供給国と政府間協定を結び、それに基づいて募集を行う方式を採用すると発表した。斡旋業者が外国人を不法に受け入れたり、また供給国が強制送還された外国人の引き取りを拒否するのを防ぎたい意向だ。2ヶ月以内に人的資源省が協定の摘要を作成したうえで関係諸国との交渉に入る。

不法外国人を雇用した使用者、ムチ打ちに

このほか新たに導入された措置としては、不法就労外国人を雇用した使用者に対して、従来の罰金や禁固刑に加えて、ムチ打ち刑を科す条文を出入国管理法に加えることになった。また、外国人労働者に対し、入国前には自国で、就労開始後は年に1回、健康診断を受けることを義務づける。

なお、2002年1月現在、登録されている外国人労働者の総数は約77万人で、うちインドネシア人が56万7000人、バングラデシュ人が10万5000人、ネパール人が5万人、フィリピン人が1万7000人、ミャンマー人が6500人、タイ人が2400人、パキスタン人が2200人、その他(インド、スリランカ、カンボジア)が2万人となっている。そのほかに不法就労外国人が100万人いると言われている。

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