チームスターズ労組、UPS社と6年暫定協約締結

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年10月

小荷物輸送最大手のUPS社は、現協約終了期限の16日前である2002年7月15日にチームスターズ労組と6年暫定協約を締結した。現在、UPS社のチームスターズ労組組合員は23万人に上っており、この協約は2002年に民間部門で交渉される協約の中で最も多くの労働者を対象にしたものとなる。労組は、現協約よりも大幅な賃上げを得たが、パート労働者のフルタイム化については労組の要求を下回る合意となった。今回、現協約の5年間ではなく6年間の協約が結ばれたことで、労使関係によるビジネスへの影響を同社は長期間回避できることになる。暫定協約は、チームスターズ組合員によって批准される必要があるが、この過程には約1カ月を要すると予想される。

2002年1月に開始された今回の交渉では、ストによる経済損失を避けるため、労使にスト回避の姿勢が見られた。暫定協約では、フルタイム従業員は、6年間に時給が少なくとも5ドル上昇する。組合に加入しているトラック運転手の平均時給は23ドルなので、22%の賃上げに相当する。パート従業員の中には、6年間で時給が6ドル上がる者もあり、フルタイム従業員との賃金格差が部分的に縮小する。パート従業員の初任給は9ドルに引き上げられる。この他、医療および企業年金給付の増額、長期障害者プランの創設、パート従業員の企業年金拡充などが行われた。

チームスターズ労組は協約期間中、毎年3000人のパート従業員のフルタイム化を要求していたが、UPSはパートの仕事を統合することによる、6年間でのパート1万人のフルタイム化に合意するにとどまった。しかし、UPSは、非組合員あるいは下請け労働者1万人のチームスターズ加入を容認したため、今後チームスターズ労組の組合員は増えることになる。

新協約はUPS社から同労組が得た歴史上最も好条件のものとなり、協約交渉に従事したチームスターズ労組のジェームス・ホッファ会長にとっても追い風となる。ラトガース大学経済学部のトロイ教授は、「ストを実施せず、荷物輸送分野の最重要企業と大変条件の良い協約を締結したことは、ホッファ会長の大きな功績で、氏の政治および労働組合における立場を向上させるだろう。」と述べている。

97年協約(現協約)におけるパートのフルタイム化

前回、そして今回の協約でパート従業員の大幅待遇改善が行われた背景には、フルタイム従業員の支持や協力があったことを見逃すわけにはいかない。1997年には、協約改定にあたり、チームスターズ労組が15日間のストを実施した。当時、UPS社は小荷物輸送の80%のシェアを持っていたが、組織化されている2000人の同社パイロットの協力を得て、約18万5000人のチームスターズ労組がストに入った。同社の顧客は他社を使った配達に切り替え、ストは同社に7億5000万ドルの損害を与えた。当時の労組の要求の主眼は、パートタイム従業員のフルタイム化にあった。パート従業員は雇用が不安定で、フルタイム従業員の平均時給20ドルに比べてパートでは11ドルと賃金格差があった。また、フルタイム従業員の77%は会社の医療保険に加入しているが、パート従業員では19%に過ぎない。さらに実際には週35時間働きながらもパートタイムで雇われている人が1万人以上あり、同社はパートタイム労働者の雇用を増やすことによりコスト削減を行っていた。組合執行部は、パートのフルタイム化を進めれば、パート社員がフルタイム社員の要求を支持するであろうし、パートの増大がフルタイムの雇用不安を生むと訴え、パートとフルタイムがお互いの利益実現のために協力しようと訴えたのである。

その結果、15日間のストの末、パートを優先した賃上げ(5年間のフルタイム従業員の賃上げは年3%、パートは年7%)を定めた協約が締結された。5年間で、パート労働に分割されていた仕事の統合により1万人のフルタイム労働の創出、さらにこれとは別に業務拡張・退職者補充などによる1万人のフルタイム労働者新規の採用が定められていた。

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