SMIC(全業種一律最低保障賃金)引上げ幅最低限に

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年9月

フィヨン社会問題・労働・連帯相は、6月24日に開催された労使協約全国委員会の会合において、毎年7月1日に改訂されるSMICの引き上げを追加引上げのない最低幅(消費者物価と労働者階級の購買力の上昇率を考慮して自動的に決定される最低引上げ幅)に留める方針を確認した。これにより、SMICは7月1日より2.4%引き上げられ時給で6.83ユーロとなる。

最低限の引上げ幅に

SMIC(全業種一律最低保障賃金)は、消費者物価上昇率と労働者階級の購買力上昇分(平均賃金上昇率に相当)を元にしたスライド制で毎年7月1日に自動的に改定されるが、その他にも政府は随時追加引き上げを認めることができる。今回は、7月1日の自動改定に当たって昨年行われたような政府による上昇幅の追加上乗せが行われなかったものである。

その方針を6月24日の労使協約全国委員会会合(ここでSMICの引上げについて政労使が協議するという建前となっている)前の21日にラファラン首相が示したことにより、野党(社会党・共産党)は労使間の話し合い重視の公約を破るものとして首相を激しく攻撃し、同日夜首相府が首相発言の訂正を行うという一幕もあったが、結局は政府方針どおり自動改定分のみの引上げとなった。

SMICと35時間制

SMICは原則として時間給であるが、35時間導入により労働時間の短縮により給与水準が目減りするのを避けるため、週39時間で就労していたSIMC労働者について、月給計算のSMICが導入された。また、パート労働者に対しても差額補助によって、時短前の給与水準が保障される仕組みとなっており、前政府(左派のジョスパン政権)はこれまで、時間給SMICの引上げ幅を月給SMICより大きく引き上げていくことにより、両者を横ならびにする方針を示していた。しかし、時給SMICが毎年引き上げられ、月給SMICは時短導入時のSMIC時給を基準に設定されることから、毎年異なる額の月給SMICが出現し、複雑さと不公平さを生んでいた(注1)

オブリ法(35時間法)では、このようなSMICの差額補助および月給SMICでの二重制度を2005年までに解消するとしており、以前より政労使も共にSMICの35時間による複雑な制度を早急に解消するという点で意見は一致していた。しかし、具体的な解消の方法をめぐってSMICが高めの水準で統一されることを懸念する経営者側と労組の間で対立しており、政府は非常に難しい対応を迫られていた。

新政府の今後の対応

フィヨン社会問題・労働・連帯相は、2.4%という最低限の上昇に留めたことについて、この上昇率はフランスの労賃上昇率の平均に等しく、景気が軟調である中、雇用を創出するためにも、企業を支援するメッセージを送る必要があるとしている。

また、政府は、オブリ法による時短に伴い複雑化、不均等化したSMIC制度の簡略化を優先するとして、併せてSMICの一本化を測る方針を示した。具体的には、諮問機関の経済社会評議会が7月10日に提出する予定の改正案を踏まえ、バカンス明けの9月から労使との協議を開始し、遅くとも2003年からSMICの統一を図りたいとしている。一方で、基本的な方針が固まり次第、SMICの追加引上げの可能性については改めて検討すると述べて、SMIC引上げを要求する労組側に一定の配慮を示した。

また、シラク大統領も業界別最低賃金の引き上げを要請するなど(注2)、低賃金労働者に配慮した発言をしている。

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