欧州裁判所が労組加入の自由を支持、政府は法改正を迫られる

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年9月

欧州人権裁判所は7月2日、組合に代表される権利を放棄することを拒否した労働者に賃上げをしないなどの罰則を科すことは欧州人権憲章に違反するとの判決を下した。政府は雇用関係法の改正を迫られる。

訴えを起こしていたのは、アソシエイティド・ニュースペーパーズに勤めていたジャーナリト、デイヴィッド・ウィルソン氏(全国ジャーナリスト組合、NUI)と、アソシエイティド・ブリティッシュ・ポーツに勤めていた港湾労働者のグループ(鉄道海上輸送組合、RMT)。アソシエイティド・ニュースペーパーズは1989年、全国ジャーナリスト労組の承認を取り消して団体交渉をうち切ると同時に、ジャーナリストらに対し、労組に代表れされる権利を放棄することを条件に4.5%の賃上げを約束する「個人契約(personal contract)」を申しでたが、ウィルソン氏はこれを拒否。それ以後、個人契約を結んだジャーナリストと対等の賃上げを受けられないできた。港湾労働者グループの方も1991年に同様な待遇を受けた。

個人契約を交わした労働者にのみ賃上げをするという使用者の申し出を拒否した組合員が賃上げを受けられないのは、雇用保護(統合)法(現在は労働組合改革・雇用権法)の規定する組合員を理由とする行為に該当するとして、それぞれ訴えを起こした。控訴院は、このような使用者の措置が不利益取り扱いに該当すると判断したが、貴族院は1995年に、「組合員であること」と本件のように組合員が労組にその雇用条件について代表してもらうこととは別個の事柄であることなどを根拠に、会社側の措置は同法に違反しないとの判決を下した。

これを受けてNUIとRMTは、労働組合会議(TUC)と人権擁護団体リバティーの支援を受けて、欧州人権憲章第11条(「誰でも自己の利益を保護するために労組に加入する権利を有する」)を根拠に、欧州人権裁判所に提訴していた。

そして今回、同裁判所の7人の判事は、全会一致で原告側を支持する判決を下した。判決文は、「労組の加入者が使用者との関係を調整する際に労組に代表してもらうことを妨げられたり制限されたりすることがないよう保障するのは国家の役割である」と述べている。

TUCのモンクス書記長は、イギリスの法律が労組を利用する労働者に罰則を課すことを使用者に許し続けてきたのはまったく常軌を逸しており、政府に法律の改正を強く求めていくと述べた。

貿易産業省は、ちょうど今夏に雇用関係法の見直し作業を始める予定になっており、今回の判決にどう適切に対応するかを協議したいと法改正に取り組む姿勢を示した。

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