国営社会保険会社ジャムソステックが労働者銀行と病院の設立を表明

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年8月

国営保険会社ジャムソステックは、サービスの質改善と、汚名返上の一環として、「労働者銀行」と病院を設立する意思を明らかにした。これは、単純労働者として低賃金で働いている約280万人の労働者とその家族の福利厚生を向上させることを狙いとしている。

ジャムソステックに対する企業の評判

国営の保険会社であるジャムソステックでは、保険契約を結んだ企業に対して提携病院での治療サービス、病気やケガの保険金支払いといった一連の保険業務を取り扱っている。インドネシアの多くの企業が同社の保険制度を利用しているが、評判はそれ程高くない。ある日系企業の総務担当者は、「ジャムソステックと提携している病院は、不衛生で、設備も整っていない。そのため、同じ掛け金でも、よりよいサービスを提供してくれる民間保険会社の方が日系企業には人気が高い」と実情を話していた。

同社のドゥクマン会計局長は、企業内の改革と、サービスの質向上の目的から、銀行と病院の設立を計画したと報告している。また、同社は様々な分野への投資活動によって2001年の純利益は3000億ルピアにも上っているという。

「労働者銀行」とは

労働者のための銀行と病院の設立というアイデアは、労働・移住省のヤコブ大臣が三者委員会の場で発案したものだ。銀行の業務目的は、インドネシア人労働者が海外就労のための渡航費用が必要な場合に融資を行ったり、企業を解雇された労働者が小規模事業を起こす際に支援を行うことである。

また、銀行は新規設立ではなく既存銀行の発行済み株式の過半数を取得することによって、費用を抑え効率的な運営をしていきたい、とルクマン局長は述べている。 同社はすでに設立のための資本金1500億ルピアを準備しており、2002年中にも計画実行に移したいとのことであった。

一方、病院の建設に関しては、まだ具体化の段階までは進んでいない模様。ヤコブ大臣は、まずチレゴンの工業団地で、労働者のための病院設立を行ない、その結果に応じて、今後の展開を決めていくとのことであった。また、ジャムソステックは単身者のための廉価な賃料の寮を建設予定であるという。

ジャムソステックの人事部長でインドネシア大学講師のバンバン氏によると、現在国民議会において、1992年第3号社会保険法(UUNo.3/1992)の改正を検討しており、ジャムソステックを現在の国営企業の株式会社制から非営利団体として改革していく案が進行中であるという。その結果、国営企業に義務付けられている国への配当金支払いの必要がなくなり、その分を社会保険加入者とその家族に還元できるということだ。ヤコブ大臣も、ジャムソステックの管轄は、国営企業国務相事務所の管轄下よりも、労働・移住省の管轄下に置くことが望ましいとの考えを示している。

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