海外出稼ぎ労働者の斡旋をめぐる汚職問題
他の東南アジア諸国と同様に、タイにおいても海外への出稼ぎ労働者の数は登録済みの労働者で40万人、不法就労者を含めると百万人以上いるとされ、その斡旋業は一大産業となっている。民間斡旋業者の不正行為が長い間問題視されている中で、それを規制するはずの労働社会福祉省のデート大臣、イラワット次官らが斡旋業者からの賄賂受取りや、省内の備品購入に関する汚職が問題となっている。
海外出稼ぎの斡旋料
タイ人労働者の海外出稼ぎが顕著化したのは1980年代からで、初期には中東方面や日本へ、最近では台湾への出稼ぎが多い(台湾も経済危機後外国人労働者の雇用規制を行っている)。
現在海外で出稼ぎ労働を行っているのは、登録済みの労働者で40万人、不法就労者を入れると百万人を超えるとされる。労働者のほとんどが、全国に約270社ある海外出稼ぎ斡旋業者(ブローカー)を通じて仕事の斡旋を受けている。
特に、タイの中でも貧しい東北部の農村からの出稼ぎ労働者が多い。農村の家計を支えるために、海外での就労を決意するが、民間の斡旋業者の法外な斡旋料や不正行為の被害者になるケースが少なくない。
そのため政府は2001年に海外出稼ぎ労働者の斡旋料を、台湾の場合5万6000バーツ、シンガポールの場合2万8000バーツといったように上限を規定したが、実際にはその数倍から数十倍を徴収しているという。
次官の汚職と今後の取り締まり
2002年の4月、労働社会福祉省のデート大臣とエラワット事務次官が、海外出稼ぎ斡旋業者から賄賂を受け取っていた疑いが浮上し、タイ国内では大きなニュースとなっている。
政治家が海外出稼ぎ斡旋業を営んでいるケースも多く、その場合の労働福祉省のチェックはほとんど受けずにすむため、不正な行為が多発していたと想定されている。実際に、政治家の経営する斡旋業者によってイスラエルやクウェートに渡航したが、あるはずの職がなかったというケースが数万件にも上っているという。
このような事態を重く見た政府は、斡旋業者の実態調査を行うと共に、政府が直接労働者に対して斡旋事業を行うという案も浮上してきた。
過去にも外務省と労働省が協力して、海外労働者保護と性産業への就業から女性と児童を保護することを目的に、タイ海外雇用機関(Thai Overseas Employment Administration)という非営利組織を設立する予定であることを発表したが、直接の斡旋業を行うことは初めてのことである(詳細は本誌1999年12月号参照)。
同省によると1999年の7月までに、海外への職業斡旋業者に騙されたという苦情は1074件、斡旋料として騙し取られた金額は3800万バーツにも上り、斡旋業者86人が逮捕されている。
2002年7月 タイの記事一覧
- 失業率は低下傾向、雇用状況改善の兆しか
- 海外出稼ぎ労働者の斡旋をめぐる汚職問題
- タイにおけるジェンダーの平等とディーセントワーク(ECOTレポート)
関連情報
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