海外で働くタイ人労働者
―台湾、イスラエル、日本

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

タイの記事一覧

  • 国別労働トピック:1999年12月

外務省と労働省は、海外で働きたい労働者への協力と、性産業への就業から女性と児童を保護することを目的に、タイ海外雇用施設(Thai Overseas Employment Administration)という非営利組織を設立する予定である事を発表した。

同省によると1999年の7月までに、海外への職業斡旋業者に騙されたという苦情は1074件、斡旋料として騙し取られた金額は3800万バーツにも上り、斡旋業者86人が逮捕されている。海外で出稼ぎをしたいと考えるタイ人労働者の数は多く、それに比例してトラブルも多いようだ。そこで、今回はタイ人労働者の多い3カ国を取り上げ、各国の状況を概観してみたい。

台湾

雇用局のソムチャイ・ワッタナ事務局長は、1999年9月21日に起きた中部の大地震で、台湾のタイ領事館に地震の被害を受けたタイ人労働者への援助と、それによって失業した労働者へ新しい雇用の提供を求めた。また、この地震で7人のタイ人労働者が亡くなったことを受け、事務局長は台湾の社会保障制度のもとで十分な補償が得られるはずであると述べた。

台湾はタイ人労働者を最も受け入れている国であり、その多くは日雇いの建設労働者などで、今回の地震で失業したタイ人は多いと見られている。しかしながらタイ人労働者には、「帰国せずに、台湾復興への協力を求める」との台湾政府の意向が報道されている。

イスラエル

労働福祉省では、低賃金と低い生活水準に耐えながらイスラエルで働く何千人ものタイ人労働者に対しての支援を模索している。現在イスラエルの最低賃金が日給780バーツなのに対して、タイ人労働者が受け取っている賃金は約650から680バーツと、大きな格差がある。

労働福祉省では職業を斡旋した後も、イスラエル人労働者と同等の賃金が支払われるように、事後ケアにも責任を負うような斡旋業者の設立を計画している。

イスラエルの労働省もタイ政府の申し出に積極的な対応をしている。現在イスラエルでは約2万4000人のタイ人が、主に農業・建設・サービス部門に従事している。イスラエル政府は更に8000人のタイ人労働者を雇う余裕があるとしている。タイの労働省では、イスラエルで就業を希望する労働者は、悪質な斡旋業者を避けるために各県の雇用局に問い合わせるように指示している。

日本

労働問題担当のソンブーン議員委員会会長(House Committee)が明らかにしたところによれば、東京池袋に本部のある外国人労働者組合「ブライト」が、日本に滞在しているタイ人不法労働者に対して法的支援を行うこととなったが、ソンブーン氏によれば、斉藤徹「ブライト」会長は、日本でタイ人不法就労労働者が社会保障制度と法的な援助を受けられるようにするためのパネル討論会に参加し、日本で働くタイ人不法労働者が劣悪な労働環境にあり、不当に解雇されたりしている現状を語った。

現在日本には約4万人のタイ人が不法に滞在しており、そのうち約3万人は性産業かブルーカラー労働に従事していると見られている。不法就労者ゆえに、彼らは社会保障の恩恵を受けることができず、労働者が疾患した場合でも逮捕され強制送還されるのを恐れて病院に行かないケースが多いという。こういった問題に対処するため、「ブライト」では不法就労者に、職場でのトラブルがあった場合、積極的に組合に連絡をとるよう呼びかけている。

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