景気低迷とインフレに悩む労働者

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年7月

労組発表の失業率は19.9%、政府発表は7.1%

中央統一労組(CUT)の研究機関DIEESEはサンパウロ首都圏の2002年3月の失業率を19.9%と発表した。失業者数は183万8,000人となる。1月の17.9%、2月の19.7%、2001年3月の17.3%から大幅な上昇となっており、3月だけで10万3,000人の職場が失われたことになる。これによって失業率は99年3月の水準に戻った。当時は98年の経済リセッションの後、99年1月のマクシ為替切り下げにより、経済活動は動揺して冷え込み、かなり長期間に渡って低迷が続くと予想されていた時期である。調査担当者によると2002年は下半期から経済が回復に入ると予想されているために、5月まではまだ失業率は上昇を続け、下半期からゆっくりと減少して行くと予想している。中央銀行はインフレ上昇圧力を心配して、基本金利を2002年4月は年率18.25%に維持しており、先行き金利引き下げ予想を出さなくなったために、同経済研究所は2002年のGDP成長率予想を2.5%から2.2%予想に切り下げて、確実に雇用水準に影響すると見ている。失業が増加すると技術集約部門でない企業は、労働力、特に給料水準が低い労働力の入れ替え速度を早めることによって、給料支払い総額の節約を図ろうとするために、平均給料は後退する。DIEESEの資料では2001年2月のサンパウロ首都圏の就労者の平均収入923レアル(約393ドル)は2002年2月に829レアル(約353ドル)へ10.2%の低下した。失業者の再就職までの平均待機期間は2月の54週から3月は52週、つまり丁度1年になった。

一方ブラジル地理統計資料院は2002年3月の6大首都圏の公式失業率を7.1%と発表した。2月の7.0%と比べて高い水準のままの横這い状態にあるが、資料院は就労人口が増加しており、状況は好転していると発表した。2001年3月比で就労人口の2%に当たる34万人の雇用が増加した。2月も前年同月比で1.3%、21万9,000人増加している。資料院では雇用が増加しながら失業率が下がらない理由として、就職希望者の増加を指摘。また資料院は現在の失業率の増加は、就職活動を諦めていた失業者が、就職チャンスが増加したと見て、求職活動を開始した結果であり、この傾向は良好であると発表した。資料院は失業率を調査した週に求職活動を行なわなかった場合は失業者として記録しない。

所得の低下で発展阻害

近年の就労者の収入低下は国家の発展を阻止していると言う意見が各方面から出ている。就労者の収入は低下していながら、政府が管理している公共料金や徴収する負担金、税金はインフレ率以上に値上げされており、就労者の可処分所得は減少している。消費が低迷すれば継続的経済成長のための投資は起こらず、労働市場も回復できないと言う理論である。中央労組の社会経済研究機関DIEESEではブラジル地理統計資料院の公式資料を基にして、為替のマクシ切り下げが起こった99年1月以来、2001年末までに6大首都圏の就労者の平均収入は10.6%減少したと計算した。この状態と大部分の就労者が低額所得の生活水準にあることから、生産部門にスケール生産に向ける投資を促す消費量が起こらない。しかも当分は収入低下が止まる条件はなく、購買力が生産拡大と投資を促すことはないと見ている。また国内経済が新たな成長サイクルに入らない限り、少なくとも3年間は給料引き上げを要求できる条件はできないだろうと予想している。資料院の最新データでは2002年2月に6大首都圏で前年同月より24万2,000人の新雇用が出現しているが、同期に就労を希望する人口の増加は27万6,000人増加して、雇用増加は求職人口の増加に追いつけない。収入の低下を補うために主婦や定年退職者が就職を希望して労働市場に参加してくるために、就職難と収入低下の悪循環を起こしている。

サンパウロ市役所の連帯・雇用・開発局の発表では、3月までの過去12カ月間にサンパウロ市のインフレ率は7.02%であるのに対し、電気料は29.82%、水道料金は12.8%、プロパンガスは28.03%の値上げとなっており、こうした激しい公共料金と増税によって消費支出は減少し、結果としてクレジット販売や小切手、手形の支払い不能件数が増加する。こうした事が経済活動回復の制約要因となっていると同局は分析している。

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