ニューディール政策に対し、会計検査院が厳しい評価

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

イギリスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2002年6月

労働党政権の「福祉から仕事へ」プログラムのなかで柱をなす雇用政策、「ニューディール政策」のこれまでの成果について、会計検査院は、政府の主張とは大きく食い違う厳しい評価を下した。政府は、同政策によって昨年秋までに34万人の若年失業者が職に就いたと主張しているが、会計検査院の報告によれば、同政策が直接生み出した若年者の職の数は、わずか8000~2万に過ぎない。

「ニューディール政策」は、労働党が1997年に政権に返り咲いた際に打ち出した雇用失業対策、「福祉から仕事へ」プログラムの柱をなすもので、失業者を1若年者、2長期、3障害者、4一人親、5中高年、6失業者の配偶者の6つのカテゴリーに分類し、それぞれに応じた対策を講じている。

このうち会計検査院が今回公表したのは、若年失業者対策の成果についての報告書である。同対策は、6カ月以上求職者手当を申請している18~24歳の者が対象で、1998年1月から12地域で試験的に開始され、同年4月から全国に導入された(注1)。政府は当初、25万人の就職を目標に掲げていた。

導入から昨年10月までの間に、若年失業者数は約34万人減少し、政府の目標を大きく上回った。ブラウン雇用年金担当閣外大臣は、これをニューディール政策の成果だとして、若年長期失業者は実質的に一掃された強調した。

ところが会計検査院の報告は、同期間にプログラム参加者のうち34万人が職に就いたことを認めながらも、その大半は良好な経済状況によって早かれ遅かれ就職できたのであって、ニューディール政策が直接これに寄与したわけではない、と厳しい評価を下している。しかも、雇用サービス庁の調べでは、就職してプログラムを離れた者のうち3万3000人が、6カ月以上の長期失業者として再びプログラムに戻っている。

報告書によれば、2000年3月までの最初の2年間に、ニューディール政策が直接寄与して減った若年失業者数は2万5000~4万5000人であり、増えた就業者数は8000~2万5000人にすぎない。

報告書はこのように推計したうえで、同政策の成果は、たんに失業者数や就業者数の一時的な変化だけで判断するのは適切ではなく、労働市場全体の中長期的な動向を見据える必要があると警告し、雇用可能性の改善度や新規雇用数などプログラムによる成果を数量化し、監視しうる測定方法が設計されるべきだと勧告している。

2002年6月 イギリスの記事一覧

関連情報