旧郵政公社、1万5000人を削減

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年6月

旧郵政公社の民営会社コンシグニアは3月25日、コストを削減して黒字化を図る計画の一環として、向こう3年間に1万5000人を削減すると発表した。対象は小包部門のパーセルフォースが主で、海外151カ所の集荷センターのうち50カ所を閉鎖する。また4月10日には、国内都市部にある9000カ所の郵便窓口のうち3000カ所を閉鎖する方針を明らかにした。人員削減の総数は4万人規模に達する可能性もある。

過去2年間に経営悪化

コンシグニアは、2001年3月に、「2000年郵便事業法」にもとづき、郵便事業の民営化に向けて旧郵政公社を改称してできた政府全株保有の株式会社(Public Limited Company)である。旧郵政公社時代には過去40年間にわたって黒字を出していたが、この2年間に経営状態は急激に悪化した。2001年4~9月期に2億8000万ポンドの最終赤字を出し、現在も1日に150万ポンドの赤字を出しているといわれる。とくに海外市場の開拓を担っていた小包部門、パーセルフォースは1カ月に1500万ポンドの赤字を出しており、2002年の営業赤字は2億ポンドに達する見通しである。

コンシグニアの経営悪化の要因として、1電子メール等の新たな通信手段の普及により書状の利用が減っていること、22001年3月から2年間主要サービスの料金を値上げできないことが決められていること、3総額6億ポンドを投じたパーセルフォースによる海外事業の拡大が失敗したこと、4高い賃金水準、5広告の減少によりダイレクトメール収入が減ったこと-などが指摘されている。

コスト削減計画

コンシグニアの経営陣は黒字化のために、総額12億ポンド(15%)のコスト削減が必要と試算しており、今回のパーセルフォースの合理化で4億6000万ポンドのコスト削減を見込んでいる。海外151カ所の集荷センターのうち50カ所を閉鎖して、急送小包サービスなどを中止し、同部門を中心に1万5000人、従業員総数の8%を削減する。

また都市部の郵便局についても、コスト削減策の一環として、3000カ所を閉鎖する計画を打ち出しており、これによる追加の人員削減は2万人以上にのぼると見られている。

郵便事業の自由化

旧郵政公社をコンシグニアに改組することを定めた「2000年郵便事業法」はまた、郵便市場の競争を促進させるため、郵便事業の監督機関、ポストコム(Postal Services Commission)を設置し、郵便事業の免許分野について免許付与権限を付与した。旧郵政公社が独占してきた料金1ポンド未満または重量350グラム未満の書状送達も、同法により現在は免許分野になっており、ポストコムはコンシグニアの郵便部門、ロイヤル・メール以外に、企業向けサービス会社ヘイズにも同分野の免許を交付し(2001年9月)、150年間続いてきた政府系機関による郵便事業の独占に終止符を打った。

ポストコムは2002年1月に、3段階方式で2006年までに郵便市場を完全自由化する計画案を発表した。第1段階は今年4月から2004年3月までで、1回分が4000通以上の料金別納郵便の取扱いを自由化する。こうした政府や企業などの大口顧客は、郵便市場の30%を占めている。郵便物の配達については、免許取得業者が自ら行っても、ロイヤル・メールに委託しても良い。

第2段階は2004年4月から2006年3月までで、1回分が500~1000通以上の料金別納郵便の取扱いを自由化する。配達については、ロイヤル・メール以外の業者にも委託できるようにする。

第3段階は2006年4月以降で、この段階で郵便市場は完全に自由化され、消費者は好きな業者を選択できる。

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