景気後退の中、労働生産性向上

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年5月

2002年2月に発表された労働省の統計によると、非農業部門の労働生産性(労働時間当りの産出量、季節調整済み)が2001年10月~12月に年率3.5%上昇、2001年3月の景気後退入り以降の9カ月間に年率2.3%上昇した。特に9月11日の同時多発テロ後、産業界が人員削減を進め、労働生産性向上につながったと考えられる。以前の4回の景気後退期(73年以降)には労働生産性が低下あるいはほとんど変化していなかったこととは対照的である。さらに労働省は2002年3月7日に上記統計を修正し、2001年10月?12月に労働生産性が年率5.2%上昇、2001年を通じて1.9%上昇(2000年に3.3%上昇)と上方修正した。この修正の直後、グリーンスパン連邦準備理事会(FRB)議長は、5.2%上昇は経済の健全さを現す数字ではあるが、かなり可能性の低い数字であると疑念を表明した。2001年を通じ1.9%上昇した労働生産性は、産出量の0.9%上昇と総労働時間の0.9%減によってもたらされた(四捨五入による誤差がある)。通年で非農業部門総労働時間が減少したのは92年(0.2%減)以来で、人員削減および時短の影響をうかがわせる。

労働生産性向上は、2000年後半からの産出量の低下が比較的小さかったにもかかわらず失業率が1.7%も上昇したという代償を伴っている。今後、経済が拡大しても雇用拡大が遅れる可能性も示唆している。しかし長期的には、インフレを抑制し金融緩和余地を残すほか、より生産性の高い仕事に労働者が従事することを可能にするため、経済成長を高め雇用拡大につながる可能性がある。

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