経済対策法案成立

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年5月

ブッシュ大統領は2002年3月9日、上下両院を通過していた経済対策法案に署名、法案が成立した。法案成立まで両党から様々な案が出され両院で検討されていたが、両党の歩み寄りが不十分で、これまでは上院で失業給付期間の最高13週延長に合意したにとどまっていた。成立した法案は、失業給付期間について失業率4%以上の州については自動的に13週延長するなどのほか、産業界およびテロの被害を直接受けたニューヨーク市に対する様々な減税措置を含む。共和党が提案していた、労働者が医療保険を購入するための税控除は実現しなかった。アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)のジョン・スウィーニー会長は、失業者の医療保険購入への援助が経済対策に盛り込まれなかった点に大変失望したと語っている。

この時期に両党の妥協が成立した背景として、2001年9月11日の同時多発テロから約6カ月が過ぎ、多くの労働者の26週の失業手当受給期間が終わりに近づいていたことがあげられる。2002年3月10日に始まる週までに160万人の労働者の失業手当がうち切られようとしていた。さらに、3月には景気回復の兆しが雇用面にも見られるようになったことから、大型景気刺激策の必要性も低くなったと考えられている。しかし活発な消費意欲に比べ、設備投資に勢いがない。そのため同法案は新規投資初年度の減価償却の拡大などでコンピュータのハードウエア、ソフトウエア、オフィス用品業界に恩恵を与える。さらに2001年と2002年の純営業損失の繰り戻しを現行の2年間ではなく5年間にわたって認め、IT産業を始めとするハイテク産業、航空業界など、90年代末に高収益を上げ多額の税金を支払ったが、その後急激な業績の落ち込みを経験した産業の税負担を軽減する。景気後退により大きな影響を受けたこれらの産業における雇用にも好影響を与えることが期待される。

2カ月連続で予想外の失業率低下

労働省は2002年3月8日、2月の雇用統計を発表した。失業率(季節調整済み)は0.1ポイント低下し5.5%となった。失業率は12月に5.8%に達していたが、多くのエコノミストはやがて6%を超えると予想していたため、2カ月連続の失業率低下は予想されていなかった。非農業部門の雇用者数は1月に比べ6万6000人増加した。この増加は2001年7月以来、しかも2001年2月以来の大幅な増加である。中でも小売業で雇用者数が5万8000人増加したが、クリスマス前の繁忙期の雇用者が通常よりも少なかったため、1月、2月に小売業から解雇される労働者が少なくなっていることも反映しており、季節調整によって経済の実態よりも良い数字になった可能性がある。パートタイム労働者は1月から38万6000人増加した。製造業の雇用者数は2月にも約5万人減少している。これは1月までの過去1年間の製造業における雇用減の平均11万1000人に比べれば小幅な雇用減になっている。

労働省は、一時解雇から職場に呼び戻された自動車産業労働者や温暖な気候などの一時的な原因で失業率が低下した可能性があると指摘している。しかし景気の好転を示す統計もある。たとえば、これまで人員削減の対象となることが多かった製造業労働者は、2001年11月に平均週40.3時間労働していたのに対し、2002年2月には平均40.7時間働いており、やがて労働者の採用につながる可能性がある。また、失業保険新規申請者数の移動平均も減少傾向にある。

最近の経済指標には景気回復を示唆するものが多く、失業率の大幅な上昇は避けられそうである。しかし採用を急拡大する企業は少ないと考えるエコノミストが多く、求職を断念していた労働者が求職活動を再開する動き(労働力人口は既に2月に82万1000人増加)もあり、一気に失業率の低下につながりそうにはない。

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