(香港特別行政区)公共機関幹部給与、見直し決定

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年4月

香港九竜労働組合会議の調査で、公共機関職員の給与が他との対比で極めて高いとの調査結果が出たのを受け、董建華長官は2002年1月3日、納税者の税金で賄われる公共機関職員の給与は政府並びに社会にとって大きな関心事だとし、幹部職員の給与の見直しを行うと発表した。

香港では景気の低迷と失業率の上昇が続き、財政赤字が600億ドル近くに増大する厳しい状況の下、公務員の給与体系の抜本的な見直しが発表され(本誌2002年3月号Ⅰ参照)、政府の諮問委員会の活動も開始され、さらに今年度に関しては、厳しい経済状況における民間の賃金動向と連動して、給与カットの可能性も示唆されている。これに対して、同じ納税者の税金で賄われる公共機関の職員の給与が不当に高いと公衆からの批判が続出し、立法会からも2001年11月に見直しの動機が提出されており、今回香港九竜労働組合会議の調査結果を受けて、見直しが検討されることになった。

同会議の調査では、香港を代表する10の公共機関が調査対象となったが、そのうち平等機会委員会(EOC)では、職員平均給与は月額7万4000ドル、アンナ・ウー委員長の年収は228万ドル、香港金融局(HKMA)では、職員平均給与は月額7万1000ドル、ジョゼフ・ヤム局長の年収は900~950万ドル、安全・未来委員会(SFC)では、職員平均は7万3500ドル、アンドリュー・シェン委員長の年収は700~750万ドル、強制積立基金計画局(MPFSA)では、職員平均給与は5万1000ドル、ラファエル・フイ業務執行理事の年収は426万ドルだった。公務員の最高給であるドナルド・ツァン政務官の年収は270万ドルであるから、公共機関幹部の給与は極めて高いことが分かるが、このような調査結果に対して、シモン・ホー中華大学教授は、香港の主要公共機関の長の給与は、米国とシンガポールの同種の機関の長と比べても、約4倍に達していると述べている。

董長官の発表を受けて、ツァン政務官は1月4日、HKMA,SFC,MPFSAの3つと、空港局、都市開発局、香港観光会議、九竜・広東鉄道会社、MTRC鉄道会社、香港貿易振興会議の合計9つの公共機関の約100人の幹部職員の給与が、民間企業の幹部社員と均等を保っているかを調査すると発表した。同政務官は、この9つの公共機関は収益を目的に運営されているので、民間部門と競争関係にあり、それゆえ民間企業の賃金慣行との比較が必要だが、他の約200ある公共機関は公務員給与の指針に即しているので、調査対象としなかったと述べた。民間との比較には専門のコンサルタントが雇われ、調査は3カ月で完了する。

一方、リー・チュク・ヤン職工会連盟(CTU)事務局長は、調査は公共機関幹部職員と公務員の比較で行うべきだとした。リー氏は、民間企業が幹部に高給を支払うことは自由だが、公共機関の幹部の給与は納税者の税金の問題だから、公務員の給与との比較がなされるべきだと批判した。だがこれに対しては、民建連(DAB)等から、収益目的の公共機関と公務員の比較は困難だとの意見も出ている。

その後、政府は1月9日、調査対象となる公共機関の範囲を拡大し、約100の公共機関の幹部の給与を調査することを決定した。これにより、医療局、香港生産性会議、EOC、プライバシー委員会、スポーツ振興会議、芸術振興会議等、香港の他の有力公共機関も調査対象に含まれることになった。この拡大調査では、仕事量と責任の観点から、公共機関の幹部とどの公務員のランクが比較可能かを検討し、しかる後にそのランクの公務員と公共機関幹部の給与が比較検討されることになる。ツァン政務官は、この調査対象の拡大で、納税者の税金の使途に対する懸念に十分答えられることになるとし、今年中に調査結果を得られるようにしたいと述べている。

このような中で、政府が収益目的の公共機関を民間企業と比較すべきであるとしたことを受け、これらの公共機関の幹部職員の給与をさらに業績に結びつけるべきだという意見が、香港人材管理研究所のライ・カム・トン副所長によって提唱され、これを支持する有力公共機関の幹部の声が一部で挙がっている。例えば、香港観光会議のセリナ・チョウ会長は、公共機関が収益目的で運営される以上、幹部職員の給与が原則として業績に結びつけられるべきことに賛成だと述べている。

他方、ランディ・チウ・バプティスト大学教授第一部の研究者は、幹部職員の給与の見直しでは根本的な解決にはならず、政府がその社会に対する責任を考慮して、公共機関の構造や職員ランクの全体的なリストラを行うことも必要だとしているが、今回の問題は董長官の表明する公務員改革の流れに位置しており、今後の展開が注目される。

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