(香港特別行政区)失業率6%を突破

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年4月

景気が低迷し、失業の悪化が労働界を含む各方面から予測される中で、政府が2002年1月17日に発表した統計によると、香港の失業率はアジア経済危機以来初めて6%を突破し、企業のレイオフが続く中で雇用市場は一段と悪化していることが明らかになった。

統計によると2001年10月-12月期の失業率は6.1%で、前期比で0.3ポイント上昇し、最悪だった1999年1月の6.4%に近づいている。失業者数は21万人で、9月-11月期に20万人を突破してからさらに増え、前期比で5200人増加している。不完全雇用率も3%で、前期比で0.1ポイント上昇した。

失業はすべての部門で悪化しているが、その中でも、装飾・整備、レストラン、輸送、不動産、企業サービスの諸部門が最も打撃を受けた。

このような失業の悪化の背景として、銀行を含む香港の有力企業のレイオフがさらに続いていることがある。1月16日にはネクスト・メディア社が180人、レベル3コミュニケーションズ社が70人、コカコーラ社が20人の人員削減を行ったが、これでそれまでの2週間の人員削減は1300人に達した。また、その直前の1月12日には香港の大手銀行の一つである東アジア銀行が200人の人員削減を行っているが、銀行部門では、昨年来有力銀行の人員削減が続いており、2001年9月には中国銀行が440人、12月には最大銀行HSBCが70人、DBSダオ・ヘン銀行が100人、スタンダード・チャーダード銀行が300人レイオフを発表している。1月の東アジア銀行の人員削減は、スタッフ総数の5.4%に当たっており、過去1年間の銀行部門での人員削減は1000人に達している。

このような状況の下で各界から厳しい見通しが表明されている。

まずアントニー・ルン財務長官は、香港の景気は2002年第1四半期もさほど好転しないとの予測のもとに、大量人員整理を回避するために、香港企業にレイオフ以外の選択肢を考慮するように要望している。

また、金融論専門のステファン・チュン・シティー大学教授は、有力企業のレイオフの影響も受けて、香港の失業率は2002年第1四半期に最悪だった6.4%を超えるだろうとしている。ただ同教授は、米国経済が大方の予測どおり夏に好転し、米国の輸入が増大すれば、香港の失業の悪化は、その影響で第3四半期に底をつくだろうと予測している。

他方、労組側は向こう6カ月で失業率がさらに上昇することに強い懸念を表明しているが、最悪の失業率につき、工連会(FTU)は7%、職工会連盟(CUT)は6.5~7%との予測を示している。また労組側は、は雇用市場の悪化について、営業利益を挙げている有力企業が便乗的に人員削減していると強く批判している。例えば、東アジア銀行が200人のレイオフを行ったことに対して、労組側は、同銀行が2001年上半期に10億ドルの利益を挙げたにもかかわらず、不必要なレイオフにより失業の悪化に影響を及ぼしていると批判している。

関連する動き

このように失業率が6%を突破して深刻化する中で、いくつかの動きが見られた。

(1) 若年層の多くが就職の展望をもち得ず、学業の継続を計画しているとの調査結果が明らかになった。

香港協進連盟が、2001年12月27日から2002年1月11日にかけて、16歳から25歳までの年齢層の1240人を対象に行った調査では、55%(または686人)が学業を継続すると回答し、このうち57%が就職にあまり期待していないとし、16.5%が全く期待していないと回答した。調査対象者のうち、フルタイムの仕事に就いていたのは305人、パートタイマーは96人だった。また回答者の34.5%が、使用者が学歴と経験の要求を高めたので、若年層の就職は他の年齢層よりも厳しくなっていると回答した。

このような調査結果を受けて、同連盟は政府に若年者の就職対策を策定し、職業訓練計画を強化するように要望している。

(2)香港キリスト教界は、雇用創出と失業対策のための1000万ドルの資金集めキャンペーンに立ち上がった。中心となっているのは「失業者のための香港教会連合」で、背景には、失業の悪化と関連する自殺や家庭内暴力の増加が、キリスト教界として無視できない状況になっていることがある。

同連合は、香港の教会と30万人の信徒からの寄付で1000万ドルの雇用創出基金を立ち上げ、その基金から新たな雇用を希望する使用者に補助金を提供するなどして、雇用創出の実際的用途に役立てたいとしている。また、この基金で失業者の支援センターを設立して、就職情報を提供し、一時的な仕事も提供したいとしている。

リー・ピン・クォン牧師は同連合のスポークスマンで香港キリスト教会議議長も務めるが、同牧師らは、さらに香港の1200の教会に呼びかけ、この厳しい雇用状況に鑑み、常勤、短期若しくは一時的な仕事を提供するように求めており、この呼びかけで、キリスト教徒と非キリスト教徒を問わず、非熟練労働の失業者1000人が職を得ると期待している。

ちなみに、景気の低迷と失業者数の増加で、香港の社会保障制度の中核である包括社会保障支援(CSSA)から給付を受ける者が増加しており、2000年12月の受給者数は24万1673人で、前年同月比で6%増加している。

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