人材の流動化が激化

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年4月

企業がR&D投入を強化し、予測される研究開発人材の競争激化

2001年11月、科学技術部、国家統計局、財政部などが、1年間にわたって行った「全社会R&D(研究開発)資源」の調査結果を発表した。それによれば、2000年の1年間で、中国では、R&D投入資金の規模は896億元に達しており、GDPに占めるR&Dの割合は1.0%に上っている。R&Dへの資金投入額からみると、すでに発展途上国の先端を走る水準に到達した。

896億元の研究開発投入資金の中で、500億元以上は企業からの資金投入で、全体の60%を占めており、その中で大中型工業企業の研究開発投入は490億元に達しており、前年度より28.8%も増加している。その他に、研究機関が28.9%、大学が8.5%をそれぞれ占めている。企業はすでに研究開発の主体になっていることが明らかである。

また、R&Dの資金投入の中で、実験費用は697.2億元を占め、R&D投入資金の77.8%を占めており、応用研究は152.1億元で、17.0%を占め、両者の合計が94.8%で、資金投入のほとんどを占めている。一方、基礎研究は46.7億元で5.2%を占めている。中央政府が基礎研究への資金投入を前年度より35.3%も増やしたにもかかわらず、企業側は応用研究が盛んなのに比べて、基礎研究の割合が依然として低い。

この調査結果をみると、中国では、科学研究が企業での研究開発により傾斜しており、国有企業や民営ハイテク企業の多くは、利益の大半を研究開発に投入するようになったことが分かる。企業が大学など研究機関と提携を図る産学協同型のR&Dも多く現れている。研究開発への資金投入の拡大と同時に、研究開発人材に対する企業の需要も急速に向上している。人的資源専門家は、今後、大手企業の中では研究開発者の導入競争がさらに激化し、研究開発者が研究機関から企業へと流れる人材の流動が起きるとみている。

国有企業における人材流出が深刻

WTO加盟後、人材競争の激化が見込まれる中、国有企業は人材流失の危機にさらされている。2001年10月に、北京市は市内150社の大中型国有企業が1982年以降採用した大卒以上の高学歴従業員に対する調査の結果を発表し、国有企業高学歴者の離職率が64%の高い水準になっており、また国有企業から流出した高学歴者の多くは外資系企業に移籍したことが明らかになった。他方、民営ハイテク企業では、高学歴者の流出率は18%に止まっている。北京市関係部門によると、これまで国有企業の人材流失の要因は、国有企業が、中国に進出した海外多国籍企業の高い賃金水準や優れた人的管理システムに勝てないためである。しかも、社会保障体制が整備されつつあり、ローカルな民営企業が勢いよく成長する中、今後、国有企業は、多国籍企業と民営企業の両方の攻勢にさらされ、人材確保は一層厳しくなる。

技能労働者が不足、高技能労働者には惜しまず高給

労働社会保障部が公表した統計データによれば、マクロ的には労働力供給が需要を大きく上回るのとは対照的に、高技能労働者が著しく不足している。2001年年末に、青島市では、プラスチック製品を作る外資企業は、年俸16万元で高級技師を導入し、ブルーカラーとしてはまれにみる高賃金で、話題になった。労働社会保障部の調査によれば、高技能労働者の不足は、機械、建築、印刷など伝統的産業だけでなく、電子情報、環境保護、工芸美術など新規産業でより深刻である。統計データによれば、高技能労働者の場合、100人当たり102の就労チャンスがあり、IT産業では60万人の技能者の需要があり、全体的に42万人が不足している。中国は、職業資格制度の確立、学歴証書と資格証書の両立を図り、さらに、企業内の職業訓練制度の強化を通じて、2005年までに、高技能労働者を現在の300万人から800万人に増やす予定である。

国際業務、金融、ハイテク人材が不足

新華社によると、WTO加盟後に、中国における金融、情報、国際業務、ハイテクなどの分野で人材の不足状況が一段と深刻さを増し、中国の持続成長のネックになる可能性もある。金融分野を例にとると、香港では現在、1300から1400名のCFA(米国AIMR認定証券アナリスト)がおり、今後も年間400から500名の規模で増加する見込みである。これに対して、中国大陸では、世界的に認められるCFA資格取得者は10人にもならない程度である。上海は国際金融センターを目指しているが、国際的な金融業務に通じる人材は著しく不足している。中国はWTO加盟に伴い、これまでの金融や会計システムを世界共通ルールに改めなければならず、今後CFA資格取得者の需要が増大するに違いない。

大手企業100社が香港で人材募集

WTO加盟後、専門人材の需要が急上昇した。2002年1月に、中国国内大手企業100社が香港で大規模な人材募集キャンペーンを展開した。100社は、中興通信、広州日報、遠大空調機、深土川華為など、主に中国南部に集中する成長企業であり、業種はサービス業、製造業、マスコミ、コンサルティングなど多岐にわたっている。これらの企業は1000人以上の求人を行い、その多くは年俸50万元以上の高給の職位であり、中には年俸60万元、さらに100万元を超える職位の求人もある。今回の求人活動を組織した香港晋興人力資源公司によると、中国大陸では現在、情報技術、金融、経営管理の3分野で特に人材の需要が大きい。専門技術をもっており、さらにマーケティング、財務、上場企業の融資業務などが分かれば、中国大陸では良いポストを見つけるチャンスがきわめて大きい。

専門人材の不足によって、人材流動化も加速している。香港に隣接する深土川では、調査によると、もはや年俸10万元レベルの賃金では、専門人材の足を留めることができない。専門人材の30%以上がジョブ・ホッピングの意向があり、企業管理者層では、転職チャンスを狙う者がとりわけ多い。深土川のヘッド・ハンティング会社によると、ヘッド・ハンティング業界では特に大手企業の部門マネジャー、部長や副社長など年俸10万元以上の人たちを狙っている。2001年12月WTO加盟後に、この会社だけで、自ら進んで登録を行い、転職を図る企業管理職が150人も上っている。

広州市国有企業は、世界に向けて経営管理者を募集

広州市は、中国ではじめて国有企業経営者の年俸制を導入したのにつづき、2002年3月までに、海外に向けて国有企業経営管理者の募集を行った。経営管理者の募集を行うのは広州ホンダ、珠江ピアノ、広州軽工業グループ、浪奇グループなど広州市の27社である。主な求人ポストは、第1に社長、副社長、第2にエンジニア、会計、企画などの最高責任者、第3に上述27社のそれぞれ子会社の社長と副社長で、計60名の求人である。広州市が発表した応募条件を満たした者は、国籍や人種をとわず、いかなる人も応募できる。広州市は複数メンバーから構成される審査委員によって、応募者の資格審査を行い、さらに筆記試験と面接などを実施し、総合的に評価したうえで、各ポストに1名を確定する。そして、各企業の取締役会が任命する。公開募集で採用した者は、1年の試用期間があり、賃金水準、勤務期間、福利厚生などに関しては、すべて各企業によって決定されるが、広州軽工業集団や浪奇グループは福利厚生を除き20万元を超える年俸を打ち出しており、30万元を超える年俸を打ち出す企業もある。

広州国有企業の求人要領
求人職位 学歴 年齢 その他の条件
1級企業(大手企業)の総経理、副総経理 大卒以上 45歳以上 中級以上の資格をもつ
工程師、総会計師、総経済師 大卒以上 45歳以上 高級資格をもち、財務や経営の専門知識もしくは大手企業での勤務経験がある
2級企業(中型企業)の総経理、副総経理 大卒以上 45歳以上

注:総経理、副総経理はそれぞれ社長、副社長、工程師、総会計師、総経済師はそれぞれ、技術、財務と経営企画の総責任者

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