AFL-CIO定期大会、組織化と政治活動の連携強化を打ち出す

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年4月

アメリカ労働組合総同盟・産別会議(AFL-CIO)は2001年12月3日から6日まで第24回定期大会(大会は2年に1度の開催)を開催した。スウィーニー会長、トラムカ書記長、シャベス=トンプソン上級副会長の3役を再選、任期期間中の4年間も現体制の活動方針が継続されることが示された。今大会の特徴の1つは、組織化と政治との関連が強調されたことである。すなわち、組織拡大と組織的な投票により政治への影響力を高める一方で、組合員の政治への参加によって労働者保護や組織拡大を実現する方法が提示された。

大会のスローガンは「アメリカの労働者、毎日のヒーロー」で、2001年9月11日の同時多発テロで亡くなった631人の組合員および救急、医療活動を行った労働者に敬意を表し、同時多発テロ後に解雇された労働者にスポットライトが当てられた。同時多発テロ後の労働関連政策としてAFL-CIOが発表した経済対策要求は、(1)失業者に対する援助(失業保険の改善、失業者およびその家族への医療保険料補助)、(2)州・地方政府所管の公共サービス(安全・健康・教育など)への連邦政府による支援、(4)中低所得者世帯を対象にした一時的減税を含む。これは、ほぼ民主党主導の「経済復興および米国労働者支援法案」を支持する内容で、大企業、裕福層への減税が前面に出た共和党の対案を否定している。

組織拡大と政治活動の相互補助

特にブッシュ政権成立後、クリントン政権が制定した人間工学基準の廃止、同時多発テロ後の景気刺激法案不成立などにみられるように、政治や労働行政が労働者の要求に十分にこたえていない。そのため、今回決議された議案「人民の人民による人民のための政府」は、政治活動をさらに強化する事を定めている。そのなかの「労働2002プログラム」は、組織化を成功させるために政治家の具体的な協力を求める事を提言している。例えば、労組の集会に参加したり、使用者に対して組織化活動に干渉しないよう要請することを政治家に求めている。その一方で、同プログラムは、地域労組・職場に政治・組織化コーディネーターを任命することや、産別が組合員の選挙登録を10%以上増加させる事などを定めている。

組合員を積極的に公職に就けようという動きも注目される。2000年選挙までに組合員を2000人以上公職に就けようとする「2000in2000プログラム」の目標達成(2500人以上の組合員が公職に就任)を受け、「Target5000プログラム」で2002年の選挙までに公職に就く組合員を倍増させるために、州・市町村選の組合員候補の選挙資金を賄うための特別政治活動委員会の創設などを提言している。

執行部は従来から組織拡大を最重要課題として掲げてきた。大会では、毎年の組織化目標を100万人とし、各産別に対して予算の30%以上を組織化に費やすように求めている。これは資源配分を通じて産別に組織化努力を促すもので、従来の路線を踏襲するものになっている。

2001年12月4日に衛星放送で演説を行ったニューヨーク州のパキタ州知事は、全国労働関係法の適用を受けてない民間部門の農業労働者、競馬場労働者などについて、カードチェック方式(労働者の過半数の署名により組合の成立を認めるもので、選挙と異なり企業による組織化妨害を受けにくいため組合設立が容易になる)による組織化を認める法案に演説当日に署名した。AFL-CIOは、これをモデルケースとして、組織化のために原則として選挙を要件とする全国労働関係法の改正を政治活動によって実現しようとしている。

移民政策転換を承認

AFL-CIOは長年、米国労働者の労働条件維持のため不法移民を排除する方針を掲げてきた。しかし、メキシコなどからの移民が急増し、その多くがサービス業などで低い労働条件の下で働いている。そのためAFL-CIOは、むしろ移民を組織化し労組の勢力拡大を図る事が適切と判断、2000年2月の執行評議会で移民政策の歴史的転換を行い、不法移民の一部合法化と労働条件改善のための施策などを政府に求めることにした。AFL-CIOは今後、不法移民への合法的な地位の付与、不法滞在者を雇用する事業者に対する制裁の撤廃などを求め、不法移民民問題で積極的な政治的役割を果たそうとしている。ブッシュ大統領は当初、不法移民の合法化に前向きであったが、同時多発テロ後は不法移民の摘発が優先され、国内の移民法の改正の動きは後退している。

参考

厚生労働省国際課海外労働室資料、2001年1月、AFL-CIOホームページ新しいウィンドウ

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