ハンガリー/最低生活水準および地域による所得格差

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年3月

ハンガリーでは最低生活水準に関する統計が国立統計局(Kozponti Statisztikai Hivatal、略称KSH)から発表されるのが慣行となっている。昨年の1人当り(1カ月)の最低生活水準は25,581フォリント(1円=2.3フォリント)であった。夫婦と子供2人の世帯の最低生活水準は95,300フォリントであった。最低生活水準については「客観的」な計算値と世帯の意見による「主観的な」数値が近似していることは興味深い。

ハンガリー国立統計局は、代表的サンプル世帯を1万世帯抽出し、様々な生活スタイルにおいて必要な生活費を調査した。1万世帯のうち2,052世帯が、非常に質素な生活をする場合に1人当り1カ月最低23,700フォリントが必要であると答えている(注1)

もう一つ興味ある結果が出ている。調査を行った世帯約10%の世帯は、生活が楽であると答えている。大部分のハンガリーの家庭(47%)は、2000年の生活をわずかな困難だけで乗り切ることができた。これらの結果は別の調査の結果と同様である。別の調査とはハンガリー国立銀行、経済科学研究所、ハンガリー・アカデミー・オブ・サイエンスの研究者らによるハンガリー家庭の貯蓄パターンに関する調査である。後者の調査結果の中で最も衝撃的なことの一つは次の点である。高所得の家庭と低所得の家庭の間に大きな格差があり、例えば調査した家庭の3分の1は、満足に暮らせる生活様式にするには現在の所得水準を2倍に引き上げる必要があるとしている。最も所得の高い世帯の割合は10%で、これは国立統計局による世帯調査の結果と極めて類似している。以下に詳細を示す。

表2 質問) 現在の収入での生活をどのように感じますか?
地域 調査した世帯の意見
楽である 少し困難である 困難である 非常に困難である
トランスダニューブ中央地域 10.6 50.7 29.7 9.0
トランスダニューブ西部地域 12.3 48.6 27.9 11.2
トランスダニューブ南部地域 11.5 48.7 29.3 10.5
中央部(ブダペストを含む) 14.5 45.8 30.0 9.7
ハンガリー北部 8.0 43.5 34.8 13.7
北部平原地域 10.7 48.1 32.3 10.7
南部平原地域 7.1 47.8 35.0 10.1

資料出所:KAH:Letminimum、2000年(中央統計局:最低生活水準)(ハンガリー語による)

研究者らによれば、世帯の収入が困難な原因、特に最低生活水準以下に下がってしまう原因は、次の諸要素にあると考えられる。(1) 家族の雇用の有無および質、(2) 養育すべき子どもの数および子どもが受けられる社会保障給付の水準。これらの要素は、たとえ「裕福な」家庭の場合でも、その世帯の経済的状況の感じ方を決める大きな要素になっているといえよう。家族の主観的経済的満足度は、その家族の有する財産の多少よりも実際の収入水準の方に大きく依存している。

最後に言及すべき点は、調査した世帯の家計に対する感じ方に影響を与えている要素として、「年齢」があることである。家族構成の年齢がより高い世帯の方が、より若い家族構成の世帯よりも、経済的地位が下降したことに対してより強く不満を抱いている。

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