多くの中小企業は2002年に週35時間制へ移行しないだろう

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年3月

2002年1月1日には、従業員20人以下の企業も週35時間制に対応していなければならないはずだった。週35時間制は1週間の生活のリズムや消費行動を変化させるなど、フランスの労働者に少なからぬ影響を与えつつあることが各種の調査で指摘されている。すべての企業が週35時間制になれば、その影響はさらに大きくなるだろう。しかし、ほとんどの中小企業はオブリ法で認められたせっかくの2年間の猶予期間を活用して こなかった。雇用省によると、週35時間制へ移行することを8月時点で考えていたのは、従業員10人未満の企業の3%、従業員10-20人の企業の11%にすぎなかった。

年末ギリギリになって、数多くの協約が調印されたとしても、週35時間制の準備を整えられる中小企業の割合はわずかにとどまる。しかし、農業を除く121万8000の民間企業の113万6000企業は従業員20人以下であるし、1280万人の民間企業労働者の400万人はこれらの中小企業に雇われている。

ただし、野党のどの有力者も政権交代時にオブリ法を見直すとは発言していない。「週35時間制は無視することのできない社会的事実になった」(手工業者連盟(UPA)のロベール・ビュゲ会長)のだ。

とは言え、中小企業にとっての時短はやはり難問である。その上、景気の減速化に見舞われていることも、実施を難しくさせている。こうした事情を踏まえ、政府は昨秋にいくつかの大幅な緩和措置を発表した。そして、「採用が困難な企業など、対応に時間が必要な企業へ若干の柔軟性を与える」ために、中小企業へ2004年1月1日までの新たな移行期間を認めることになった。

この措置により、時間外労働の割当枠が2002年には120時間から180時間(週39時間に対応)へ、2003年にも170時間へ拡大される。採用が難しい産業部門には、負担の軽減など、追加的な補助も定められている。MEDEFはこれらの緩和措置を歓迎しているが、労働総同盟(CGT)では「中小企業の時短は死んだ」と見ている。

時短問題に特に力を入れてきた民主労働同盟(CFDT)は、週35時間制が中小企業に数多く見られる不安定雇用の削減に貢献すると指摘するなど、その利点を強調することによって、普及の迅速化を訴える一方、導入の遅れが、職業訓練や従業員福祉など、時短以外の面でも大企業との格差の拡大につながりかねないと懸念を強めている。

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