英国のビジネス環境、欧州で最低

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年3月

英国政府がこれまで主張してきたのとは裏腹に、英国のビジネス環境は欧州諸国のなかで最も悪いという結果が、欧州委員会の調査で明らかになった。

調査は、EU加盟全15カ国の中小・大企業あわせて4000社を対象に行われた。それによると、国内およびEUの不必要な規則や法の硬直的な運用により、企業は年間で約500億ユーロ(305億ポンド)のコストを負っており(企業の年間支出の15%)、なかでも英国は、財・サービスを提供しようとする企業に課せられる規則上の負担がとくに重い。英国についでビジネス環境が悪いのは、イタリア、フランスで、反対に最も活動しやすい国として挙げられたのは、フィンランド、ルクセンブルク、ポルトガル、オランダであった。

欧州委員会によると、英国では官僚的な形式主義が深刻で、とくに複雑な税制、雇用規則、製品規格規則などが企業活動を妨げている。英国政府はこれまで、自国の官僚的な形式主義の縮減に努めてきただけでなく、他の欧州諸国にもそれを求めてきただけに、今回の調査結果に困惑の色を隠せない。

調査結果について野党・保守党は、1997年に労働党が政権について以来、英国の競争力は世界順位で9位から19位に転落し、また2000年1年間に導入された新規則が3865件に達していることを挙げながら、今回の調査結果は、労働党政府が企業にいかに過大な負担を課してきたかを裏付けるものだと論じている。

英国産業連盟(CBI)は微妙なコメントをしている。英国への対内投資が高い水準を維持しているのを見ると欧州委員会の調査結果は事態を誇張している嫌いがあるとする一方で、政策立案者に過度の規制の危険性について警鐘を鳴らしているとの見方を示している。

今回の調査結果に対する見方は立場によって様々だが、一部の識者は次のようにも見ている。欧州委員会は英国の過度の規制を非難しているが、近年導入されている規制の多くはEU自身から発せられているもので、他の欧州加盟国も導入している。したがって今回の調査結果は、導入したEU規制について、英国は他のEU諸国と比較してより厳格に運用していることを物語っているのである。

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