労働コスト削減の動き

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年3月

ハイテク企業のみならず自動車、航空、報道メディア、ホテル、金融サービス業で給与、手当の削減を行う企業が多くなっている。人事コンサルタンティングを行うワトソン・ワイアット・ワールドワイド社によると、2001年9月11日の同時多発テロ以来、調査対象となった諸産業110社のうち約4分の1が全ての職階の労働者の昇給幅を減らしたり、昇給を見送った。調査対象の約16%の企業が上級経営陣の給与を削減あるいは凍結し、9%の企業が時間給従業員の賃金削減あるいは凍結をしている。

自動車部品大手のビステオン社は2002年1月1日よりホワイトカラーの401Kプランへの同社の拠出を停止すると発表している。また、報道メディアのトリビューン社は2001年11月、大恐慌以来最悪の広告収入の減少のため、2002年に非組合員の賃金凍結と上級管理職140人の報酬5%カットを発表した。

ユナイテッド航空、労組にコスト削減協力を要請

ユナイテッド航空の最大費目である労働費用は、2001年1月~9月に前年同期比で11.2%増加し、業界で最も高い部類に属する。同社は、同時多発テロ以前にも景気後退やビジネス客の減少で業績を悪化させていた。2001年1月~9月の損失は18億ドルに達し、10月には1日あたり1500万ドルの損失を出している。同社は10月末に多くの財務データを労組に公開し労働費用を引き下げるために協力を要請している。これに対し、客室乗務員労組は賃金などの面で譲歩しないとしている。またパイロット労組(ALPA)は、給与削減の可能性を否定しないが交換条件として労組が何かを得る必要があると述べている。

同社は、国際機械工労組(IAM)加盟の機械工1万5000人と2年間にわたって協約交渉を続けてきた。同社は機械工労組に大幅賃上げを約束していたが、2年間で財務内容が悪化した。労組は、業界トップレベルの待遇を獲得した同社パイロットや客室乗務員のように良い待遇を要求したため、2002年1月19日、同社と機械工労組の交渉は決裂し2月20日のストライキが懸念される状態となった。これを回避するため、ブッシュ大統領に任命された3人の委員団が法的拘束力のない和解案を1月20日に提示した。和解案は、長期勤続の機械工への総支払額を直ちに37%上げるなど、同社 同社は、国際機械工労組加盟の機械工1万5000人と2年間にわたって協約交渉を続けてきた。同社は機械工労組に大幅賃上げを約束していたが、2年間で財務内容が悪化した。労組は、業界トップレベルの待遇を獲得した同社パイロットや客室乗務員のように良い待遇を要求したため、2002年1月19日、同社と機械工労組は協約合意できず2月20日にストライキが起きる可能性が生じた。これを回避するため、ブッシュ大統領に任命された3人の委員団が法的拘束力のない和解案を1月20日に提示した。和解案は、長期勤続の機械工への総支払額を直ちに37%上げるなど、同社機械工の賃金を大幅に引き上げるものであったが、同社は労使紛争を避けるために和解案を受け入れた。しかし、会社側がパイロット労組などに既に働きかけているように、機械工の新協約締結後、同社が労働条件で譲歩を迫ることが予想される。そのため、労組が賃下げを受け入れた1994年協約に基づく現在の賃金水準をまず業界最高レベルに引き上げることが必要と考える組合員が多く、労組は2月12日の投票で会社側の提案を否決、労使交渉で合意できない場合の2月20日からのスト実施を可決した。2月13日現在、労使交渉が来週から再開される予定で、労使ともに、スト期限を切って交渉を進めないと合意に達することができないと考え、現段階での大統領による介入を望んでいない。

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