人口の約60%が貧困状態
―世銀のレポートより

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年2月

インドネシアの人口の約6割が貧困、という衝撃的な数字が世銀の報告書から浮かび上がってきた。2億人以上の人口を抱え、数多くの島々からなるインドネシアでは1日2米ドル以下で暮らす人たちが、日本の人口に匹敵する数存在する。

貧困率

2001年11月上旬に、インドネシアへの援助や融資を行っている国々または機関が集まり、支援対策を話し合う対インドネシア援助国会議(CGI)の年次総会が開かれた。そこで提示された世銀のレポートによると、人口の60%、1億2000万人以上の人が「非常に貧しい(very poor)」または「貧困に近い(near poor)」状況にあることが分かった。そこでCGIの2002年の最重要課題として「貧困」を取り上げ、31億4000万米ドルの資金が貧困の撲滅にあてられることとなった。

報告書によると、2000年の貧困率(1日の支出が1米ドル[1993年の水準]以下で、暮らす人々の割合)は、経済危機の影響が最も大きく現れた1999年よりも減少したとはいえ、未だに全人口の15.2%、約3200万人の人々が貧困状態にあることを示している1)。

さらに、貧困率の基準を1日の支出が2米ドル以下の人々としてみると、全人口の約6割、57.9%の人々が貧困状態にあることが分かった。報告書のなかで世界銀行は、インドネシア経済の回復のためには、どれだけ多くの人々を貧困から抜け出せようにするかが鍵であるとし、教育や医療サービスの充実の重要性を訴えている。

1)1993年時点の1米ドルは、人間が生存のために最低限必要な1日分の摂取カロリーを購入するための費用を目安にしている。

画像:グラフ

出所:Jakarta Post、2001年11月11日、データ元:世界銀行

世界銀行では貧困指標を1日のカロリー摂取量に必要な支出で算出しているが、国連開発計画(UNDP)では、平均寿命や識字率、1人当たりGDPや幼児死亡率などを総合的に加味したHDI(Human Development Index)を用いて、「人間の可能性をどの程度生かしながら生活を営むことが出来るか」ということを表している。UNDPでは毎年『人間開発報告書』を発刊しており、2000年は「人権と人間開発」をテーマにまとめられた。そこでは、途上国の輸出加工区で結社の自由を奪われた労働者のケースや、児童労働の問題点などが指摘されている。

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