繊維・縫製産業、各地で大幅な雇用削減

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年2月

製造業のなかでも、労働従事者の相対的に多い繊維・縫製業において、大幅な解雇が予想され、2002年には10万人が失業するとも予測されている。

世界的な不況

インドネシア・テキスタイル協会(API)のベニー会長は、「世界的な不況と不安定な国内情勢が続くようであれば、10万人の雇用削減もあり得る」と述べ、同産業の苦しい内情を明らかにした。「不況による需要の減退に加え、インドネシアでは燃料と電気代、輸送費も近々引き上げられることが決定しており、コスト削減もままならない状況である。同産業の生産コストに占める労賃の割合は12%と非常に低い水準ではあるが」と付け加えた。

2001年の同産業の解雇者は統計上は4200人とされているが、実際にはこの数字を超えているのではないかと、同会長は推測する。同産業に従事する労働者は約120万人で、多くが西ジャワ州のバンドン、中央ジャワ州のテガル、ペカロンガン、スラカルタ、東ジャワ州のモジョクト、そしてバリ州である。特にバンドンでは多くの工場があり、約60万人が同産業に従事している。

2001年9月の同時テロ以降、世界的な不況が一層深刻なものとなり、2001年のテキスタイル産業の輸出額は前年比25%ダウンの61億5000万米ドルとなる見込みである。また、2002年も売上額20%の減少、生産量では10トンの減少が見込まれており、先行きは不透明だ。

この部門での大量解雇は実際既に起こっている。例えば2000年タンゲラン州の縫製業PTケンカナ・イダ・ガーメント社は、工場の閉鎖を理由に879名の従業員を解雇、ジャケット製造を行うPTコイヌス・ジャヤ社も250名を解雇。繊維・縫製業以外の企業も含めると、タンゲラン地域だけで1600人以上が失業したとされている。

AFTAの開始

2002年1月からはASEAN自由貿易地域(AFTA)の対象となる。インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、タイ、フィリピンの6ヶ国はテキスタイル製品の関税を0~5%の範囲に引き下げなくてはならない。そのため、国内には安価な衣料が大量に流入してくる恐れもあり、更に同産業へ打撃を与えそうだ。

ASEANメンバー外ではあるが、賃金の安い中国やパキスタン、インドなどがASEANのメンバーと協定を結んだ場合、これらの国々の製品が市場に安い関税率で流入してくる可能性は大きい。

政府の対応

一方ヤコブ労働移住省大臣は、この数字が推測に過ぎないとしながらも、政府としてもAPIが予測するようなテキスタイル産業の大量失業を防ぐため、何らかの手立てを講じたいとしている。そして、同産業の経営者たちに労働者1人当たりの労働時間の短縮により出来るだけ解雇を避けることを、また労働者たちには、賃上げストなどを行うことによって自分たちの状況を更に悪化させないように呼びかけた。

労働時間の短縮

前述の西ジャワ州の繊維工場では、従来は1日8時間、週7日の週56時間勤務であったのが、2001年11月の時点で1日5時間、週6日の週30時間労働に大幅に労働時間を削減した。

また、同州の繊維業労働者約10万人が2001年11月から2002年の新年まで、ラマダン、クリスマス、新年を合わせた長期休暇として約1カ月半休暇を与えられたという。従来これらの休暇は、長くても2週間前後だったため、海外の注文減が響いていると見られている。

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