56人の大企業経営者が解雇規制強化案の廃案を求める

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年1月

56人の大企業経営者たちが10月24日付の『レゼコー』に労使関係近代化法案の解雇規制強化案を批判する、連各の「アピール」を発表した。12月の国会で最終的に成立する予定のいわゆる「労使関係近代化法案」に盛り込まれる解雇手続きの強化は諦めるべきだとして、ジョスパン首相とギグー雇用相への強いメッセージを送ったものだ。

このような行動は極めて異例である。これまでは週35時間制へ反対の意思を表明する場合も、年金基金擁護の立場を訴える場合も、経営者たちは常にフランス企業運動(MEDEF)に代弁させてきたからである。

今回のイニシアチブはフランス民間企業協会(AFEP)が取った。AFEPは、左派の国有化政策に反対するために、コンパニー・ジェネラル・デレクトリシテの当時の社長アンブロワーズ・ルー氏によって1982年に設立された。

ルノーのルイ・シュヴェツェール氏など、何人かの有力者が参加していないとしても、合計150万人の労働者を雇用する56人の経営者はフランス経済に大きな影響力を持っている。このアピールに署名した経営者には、AXAのクロード・ベベアール氏、ソシエテ・ジェネラルのダニエル・ブートン氏、プジョー(PSA)のジャン=マルタン・フォルツ氏、BNPパリバのミシェル・ペブロー氏、クレディ・リヨネのジャン・ペルルヴァード氏などが含まれる。MEDEFのセリエール会長も持ち株会社CGIPの経営者として署名した。

AFEPのメンバーの中には、社会党とつながりを持つ者や社会党の幹部と交流がある者も含まれているが、経済的理由に基づく解雇の定義をさらに制約的にしたことで政府を批判する。「この改革は先進国に見られる動きに逆行するものであり、労使対話の『貧困化』を招くことになる」し、「合理化計画の公表の制限(従業員代表へ優先的に通知される)はインサイダー取引を処罰する証券取引法の規則と完全に矛盾するものだ」というのが批判の骨子だ。

アピールには、「新規定は競争力を維持するための企業の調整プロセスにブレーキをかけ」、「労働者に罠をかけるものになる」と記されている。この数週間で株価が暴落している携帯電話部門を例に取り、法律が経営者からあらゆる対応能力を奪うことになると指摘する。「法律は解雇期間を少なくとも2倍に延ばそうとしている。4分の1の従業員を解雇する従業員1000人の企業の場合、手続きが100日程度から200日に引き延ばされる。法案に定められている転職休暇を考慮すると、労働契約を解消するまでに500日程度が必要になる」という。

1999年秋のミシュラン事件以降、AOM-エール・リベルテ、マークス&スペンサー、つい最近ではムリネクスなど、論議を呼ぶ大量解雇が続く中、共産党の圧力下で首相は解雇規制の強化を受け入れざるを得なかったわけだが、経営者たちは、「感動は悪い助言者だ」と結論する。

一方で、MEDEFは開始した説明・提案キャンペーン(25日にアングレームで最初の地域フォーラムを実施)などを通して大統領選に影響力を行使しようとの意思を誇示している。経済成長率が大幅に低下している中、首相は従業員20人以下の企業の週35時間制移行規則を緩和した。署名経営者たちは解雇権の問題でも首相が同様の実践的な行動を取るべきだと期待している。ファビウス経済相は6月以降、「投資と採用に抑止的な効果」を及ぼしかねないと、規制強化に否定的だったが、これまでのところその立場はまだ力を得ていない。

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