MEDEFとCGPME、社会保障関係公庫の運営から撤退

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年1月

経営者団体のフランス経営者運動(MEDEF)と中小企業総連盟(CGPME)は10月1日、週35時間制導入促進のための公的援助の財源問題等政府の社会保障制度運営に対する不満などから、社会保障会計の各種公庫への代表者選出を見送り、これら公庫の運営から事実上撤退した。これにより、戦後50年以上の長きにわたり保たれてきた労使共同運営を建前とする社会保障制度の根幹が崩れたこととなる。ただし、社会保障会計の改革次第によっては復帰する考えもにじませており、本行動は、来春の大統領選、総選挙をにらんだ経済界としての圧力行使の一環との見方もある。

35時間制導入促進のための公的援助の財源問題がきっかけ

今回の撤退劇の端緒は、政府が、社会保障会計の黒字分を、週法定労働時間35時間制度の導入支援策(導入企業の社会保障費の減免措置)の財源の一部に充てようとしたことにある。この措置にMEDEFは当初より強く反対し、導入支援策の財源に関する明確なルール作りを求めるとともに、社会保障会計にかかる重要決定を労使の頭越しに行われることに強い懸念を表明してきていた。

本年の6月19日には、MEDEFはジョスパン首相に対して、(1)社会保障会計の歳入・歳出管理における独立性の尊重、(2)政府は各種公庫理事会議決を尊重すること、(3)国による社会保障会計への財政負担要求に対する弁済の保障、(4)各種公庫の部長クラス人事任命権の国から当該公庫理事会への移管、(5)各種公庫の会計監査の独立した監査機関への依頼、(6)社会保障会計黒字分の優先的な同会計の債務削減のための準備基金への繰り入れ、(7)特に健康保険公庫についての国と公庫理事会のそれぞれの権限の明確化、などの要求を掲げ、政労使間の交渉開始を求め、政府側も交渉に応じるに至った。その中でMEDEFは、満足のいく回答が得られない場合には代表者選出を行わない旨、7月下旬には表明していた。

経営者側からみると、労使による共同運営は単なる建前と堕しており、実質的には政府が運営の実権を担っているとしてかねてより不満があったところに、今回の財源問題が火をつけた格好となった。本財源問題については労組側も一部反対を表明していることから、政府側の譲歩を予想する向きもあったが、結果として、政府側より満足の行く回答は得られなかったとして、当初の表明どおりMEDEFは10月1日以降の各公庫への代表者派遣を取りやめた。

CGPMEもMEDEFと歩調をあわせたが、手工業連合会(UPA)は代表者を引き続き送ることとした。政府側は、これら2団体の脱退の場合でも運営が確保されるようUPAが単独で代表者を選出することを可能とすることなどを内容とする政令(デクレ)を準備する一方で、MEDEF等に対しては、時短企業向け公的援助の財源を基金化し2001年から社会保険会計の黒字分充当を可能な限り低い額に押さえるという方針を示してきたが、理解は得られなかった。

来年の大統領選、総選挙の結果によっては復帰も

今回の撤退劇については、来年春の大統領選・総選挙を睨んだ経済界としての圧力行使とする見方が一般的で、対決姿勢を示しつつも、話し合いの継続にも含みを持たす形での撤退となっている。したがって、来春の選挙の結果及びその後の状況次第では、再び復帰する可能性もあると見られている。

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