TUC大会、米テロで早期閉幕

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年12月

9月10日から13日までの開催を予定していた労働組合会議(TUC)の年次大会は、11日にアメリカで起きた同時多発テロの影響で、12日午前、閉幕した。11日に予定されていたブレア首相の基調演説も急遽キャンセルされ、今大会で最大の争点となっていた公共サービスの民営化問題についても、反対決議は行われず閉幕した。

早期閉幕の理由としてTUCのビル・モーリス会長は、米テロ後の英国政府の対応を支援するためであり、また公共サービスの民営化問題に関して、こうした時期に政府を批判することは適切でないと述べた。

今大会で取り上げられる予定だった提案はすべて、TUC総評議会に付託されることになった。各提案を総評議会が検討したうえで、採用の可否について各加盟労組に報告する。

今大会の最大の争点となっていた公共サービスの民営化問題は、6月の総選挙の際に労働党が2期目の優先課題として掲げたもので、選挙で勝利して以降、関連労組や公共部門労働者からの反発が日増しに強くなっていた。

重点分野に掲げられているのは、①中・高等学校教育、②国民医療制度(NHS)が運営する病院、③警察・司法組織、④鉄道網―で、例えば、教育分野では、教師を対象とした講習や設備の導入などの学校運営を民間会社が請け負う。

これまでに、GMB一般労組が25万ポンド規模の反対キャンペーンを実施したり、ジョン・エドモンズ同書記長が、今大会での首相の演説は労組との衝突を回避する最後のチャンスとなるだろうと警告する一方、首相も労組には一切拒否権はないと発言するなど、今大会での首相と労組の全面対決は避けられない情勢になっていた。

事実、各組合代表に配布された首相演説の原稿コピーによると、首相は、公共サービスの改革が英国の将来にとって決定的であることを訴えるために、かつて労働党綱領第4条 

注) の修正を提案し古参党員から猛反発を受けながら実現させた経験まで引き合いに出しており、労組と真っ向から対決する姿勢であったことがわかる。

注) 労働党綱領第4条は、「生産、分配、交換手段の公有化」を謳ったもので、1918年にロシア革命の影響を受けて制定された。党員証の裏にも印刷されている党の象徴的条項であり、1959年にゲイツケルが改革に着手しようとして失敗して以来、誰も取り上げてこなかったが、1994年の年次大会で党首になって間もないブレア氏が見直しを要求。2日後に僅差で否決されたが、翌3月の党執行委員会で修正案は可決、4月の臨時党大会で圧倒的多数で成立し(467対3)、ここにニュー・レイバーが正式に誕生することになった。

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