有名企業の労働条件をNGOが監視

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

スペインの記事一覧

  • 国別労働トピック:2001年11月

イベリア半島の北西端、ポルトガルの北に位置するガリシア地方は、伝統的に農業・漁業中心の地方であったが、近年は繊維・アパレル産業の成長に目を見張るものがある。著名なファッション・デザイナーの間でもガリシア出身者が多く、スペインのモード発信地と化した感すらある。

こんな状況を象徴する存在が、やはりガリシアに本拠を置くスペイン一のアパレルメーカー、インディテックス(Inditex)社であろう。「サラ(Zara)」、「マッシモ・ドゥッティ(Massimo Dutti)」、「ストラディバリウス(Stradivarius)」などのブランドを抱える同社は、手ごろな価格と主要都市のショッピング街に配した多数の店舗で、大成功を収めている。世界的にも部門第4位を占め、欧州やラテン・アメリカのほか日本を含む34カ国に進出しており、2001年にはさらに175店舗を増やす予定である。

このほど、同社の株120株をNGOのSetemが購入したことが話題となった。Setemは1997年より、「メード・イン・人権」の名のもとに「適正な労働条件・賃金を守る商業活動」を推進し、また消費者にもこの問題についての情報を提供するキャンペーンを進めているが、その一環としてスペインの主要なアパレル・メーカーの生産状況調査を行った。繊維産業では安価な人件費を求めてアジアやアフリカなどに工場を設置するケースが増えているが、これらの国々では労働者の保護に関する法的規制が弱く、適正な労働条件が守られないことも往々にして起こりうる。ちなみにインディテックス社はスペイン・イタリア・フランス・ポルトガルのほか、中国・インド・ベトナムに工場を有する。

Setemは「インディテックス社は生産工程についての情報が不透明な企業」と判断し、株主としての立場から改めて情報を求めていくことを意図している。具体的には次回株主総会に出席し、企業の社会的責任をめぐって質問するほか、他の株主の意識向上をはかっていきたいということである。また所有する株から何らかの利益を得た場合には、これはキャンペーンの資金にあてられる。

当のインディテックス社の方では、Setemのキャンペーンを積極的に評価しながらも、「情報が不透明な企業」との評価には同意しかねるといったところである。同社は広報担当者を通じ、常に労働者の状況に配慮しており、2000年には社会的責任を扱う課を新たに創設したと訴えている。ただし会社が成長し、海外での生産拠点が増えるにつれて、労働条件のコントロールが次第に難しくなっている点も認めている。そのため同社では、企業コンサルタントのPWCコンサルティング社の協力を得て、工場での労働条件や納入業者との関係をさらに調査していく意向である。

関連情報