雇用創出がスピードダウン、景気後退の影響か

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

スペインの記事一覧

  • 国別労働トピック:2001年11月

2001年第2四半期の労働力調査が発表されたが、それによると失業率は12.97%と過去20年間で初めて13%を下回った。

だが今回の調査結果に対しては、むしろ悲観的な見方の方が強い。というのは、失業の減少よりも雇用創出のスピードダウンの方が目立つからである。

第2四半期を通じて失業者数は7万5300人減少(男性が5万7000人減、女性が1万8300人減)、過去12カ月間では15万3500人減少したことになる。一方雇用創出は9万700人増え、過去12カ月間では25万7100人増となっているが、2000年の第2四半期の数値67万6500人増と比べると、増加の幅が大きく縮まっていることがわかる。また第2四半期の数値としては過去8年間で最低である。部門別では建設部門の増加が直前の四半期に対して5万4000人増、過去12カ月間で11万800人(+7.02%)と最も大きいが、それでも前年同期の14万600人増には及ばない。

季節変動の観点から見ると、第2四半期は観光部門が大きく伸びる時期である。これを反映して、サービス業では直前の四半期に対し雇用が10万2200人増えている(+1.13%)。ただし前年同期からの伸びはわずかに10万3400人にとどまった。

工業部門での過去12カ月間の雇用増は5万2900人となっている。しかし直前の四半期に比べると逆に300人減少し、ごくわずかながら雇用破壊があらわれている。また農業での雇用喪失は6万5600人にのぼっている。

失業率が1997年以来低下を続け、雇用創出が続いているにもかかわらず、今回の調査結果を悲観視する傾向が目立つ背景には、すでにその兆しをあらわしている「景気後退」がついに雇用面にも影響を及ぼし始めたかとの感があるからである。この点は政府も認めざるを得ないが、それでもアパリシオ労相は、国際的な経済成長のストップという状況の中で、スペインはよくこれに耐えていると評価している。

また労相は、3月に施行された労働市場改革が効果を発揮し、雇用増と雇用の質の向上が獲得できたとの見方も示した。確かに、賃金労働者の間で期間の定めのない雇用労働者が5万9200人(過去12カ月間では21万7200人)増えたのに対し、有期雇用労働者は1万8400人増(過去12カ月間では8400人減)にとどまったことを見ると、労相の主張は一理あるようである。というのも、1990年代半ば以来の労働市場柔軟化政策の結果として起こった有期雇用の急増は、雇用の質の低下・不安定要因として近年特に批判されてきた点であるからである

2001年11月 スペインの記事一覧

関連情報