統計方法の変更により、低下が予想される失業率

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年11月

2002年に失業率算出の新システムの運用が開始されるが、それにともなってスペインの失業率は欧州平均に近い数値になることが予想される。スペインの現時点でのデータに新たな統計方法をあてはめると、失業者数はほぼ50万人近く減ってしまう。例えば第1四半期の失業者数は226万7400人となっているが、これが179万6800人まで激減、つまり統計方法が変わっただけで、失業率は13.43%から10.95%に低下することになる。そしてこれは欧州平均を2ポイント上回るだけの数値である。10年前には欧州平均との差は10ポイントにものぼっていた。

欧州統計事務局は欧州全体での経済・労働データの統一に向けた努力を重ねてきたが、その中でスペインでの労働力調査(EPA)実施にあたっている国立統計庁(INE)にも、2002年より統計方法の修正変更が課されることになった。国立統計庁は従来、失業者を「調査に先立つ3カ月間に積極的に職探しをした者」としてきたが、新方法ではこの期間が4週間に短縮される。そのため、調査前3カ月から1カ月の間に職探しをした者は、失業者ではなく「労働活動をしていない者」として数えられることになる。

上記のほかにも、労働力調査がスペイン労働市場の現状をより忠実に反映することを目指し、いくつかの修正が導入される。中でも重要なのは、従来は十分調査されることがなかった移民労働者を考慮に入れたサンプリング、調査に協力しない回答者や調査時に留守中だった回答者の存在によって生じる歪みの修正である。

現在の労働力調査実施に際しては、2015年までの年間移民労働者流入数を3万人と想定しているが、これは年を追って無意味な数値となりつつある。国立統計庁の算定では、1998年の移民労働者流入数は12万人、99年はほぼ20万人近く、2000年には36万6000人となっている。さらに2001年には流入数25万人、2002年には22万7000人、2003年には20万4000人、2004年には18万1000人を予想している。なお移民労働者流入数が今後減少傾向をたどるとの見方は、政府による移民関連法のより厳格な適用によってスペインへの移民の数、また移民の就職・経済上の機会が次第に縮小するとの予想に基づいている。移民一世の労働力率が非常に高いことからも、これによって就業者数が目覚しく増えるであろうと、国立統計庁では報告している。

労働力調査では、「就業者」とは16歳以上で調査期間の1週間の間に少なくとも1時間働き、何らかの報酬(賃金、日当、企業利益など)を現金あるいは物で得た者としている。また、職があるが病気・休暇・その他の状況で一時的に通勤しておらず、またそれによって雇用関係の消滅を意味しない者も、就業者に含まれる。就業者は非賃金労働者(使用者、賃金労働者・独立労働者を雇用していない企業経営者、協同組合員、家族労働者)と賃金労働者(公行政及び民間)に分けられる。

また労働時間によって、終日労働者とパートタイム労働者に分けられる。終日労働者の場合、通常の労働時間が週30時間未満であってはならず、逆にパートタイム労働者ではこれが週35時間を超えてはならない。労働時間が週30時間から35時間の労働者は分類が曖昧だが、その場合は回答者の職業上の分類を用いることが多い。賃金労働者は期間の定めのない雇用労働者と有期雇用労働者に分けられる。有期雇用労働者は雇用契約の終了を何らかの客観的な形(一定期間後、あるいは一定の作業の終了後)で定められている者である。

上記のほかに、就業者の中では労働時間の不足によるサブ雇用とみなされる層が重要である。これは1998年にジュネーブで開催された第16回国際労働統計会議で定義づけられたものである。労働力調査では、長時間働きたいと希望している労働者で、実際にそれができる状況があり、調査期間の1週間の労働時間が同じ部門の終日雇用労働者の労働時間よりも少ない者を、サブ雇用労働者とみなしている。

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