(香港特別行政区)政府、観光業に180億ドル支出計画

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年11月

香港ではこのところ景気が低迷し、 失業率も上昇しているが(前記事参照)、 このような景気と労働市場にてこ入れする意味も含め、董建華長官は2001年8月24日、 香港観光業に2006年までの向こう5年間180億ドルを支出する計画を発表した。

「観光事業香港」と題するこの計画の発表に当たり、董長官は、 香港の産業構造の転換過程で、 ハイテク分野等のハードウェア部門の強化にはソフトウェア部門としてのサービス業の充実が必要であるとし、 香港経済における観光業の重要性を強調した。 また同長官は、 昨年香港を訪れた観光客数が1300万人で、 これに対応する香港観光産業の雇用者数が33万人であることを指摘し、 ここから、 さらに1700万、 2100万人と観光客数を増加させれば、 これが新たな雇用の創出につながるとの確信を表明し、 さらに民間部門にも同計画への参加を呼びかけた。

「観光事業香港」計画は、 先に決定したディズニーランド建設(本誌2000年2月号参照)も領域的にその全体構想の一部に位置付けられている大きな計画で、 その主な内容は概略以下のとおりである。

香港の重要地域である九竜(カオルン)、 セントラル、 香港島南部、 ランタオ島北部、 サイクン(西貢)の5地域に焦点を絞って計画を展開する。

  • 九竜地域では、 西九竜とツィム・シャ・ツイ海岸通りの間に芸術・文化ベルト地帯を開発する。
  • セントラル地域では、 ラン・クヮイ・フォン地区とハリウッド通りの周りの区域を、 孫文縁の地を含めて、 文化並びに歴史にまつわる区域として整備し、 食文化についてのこの区域の評価をさらにに高める。
  • ランタオ島北部では、 ディズニーランド計画を進め、 ツン・チュン・ケーブルカーや子供パークを開発して、 観光目的地に整備する。
  • 香港島南部では、 漁師の波止場に戸外レストランを整備するなどして魅力を加え、 交通の便を改善するなどしてオーシャン・パークを再開発する。
  • サイクン地域では、 その香港の裏庭としての役割を強化し、 エコ・ツーリズムやウォータースポーツ等の振興を図る。

この計画に対しては、 早速幾つかの意見が表明されている。

科学技術大学の経済開発センター所長フランシス・ルイ教授は、 この計画は観光業に対する政府の補助金支出の側面があり、 香港の観光業には役立つことにはなるが、 香港経済全体にとってどれほどの効果があるかどうかは未知数であると述べている。

香港旅行業会議のジョゼフ・トゥン副議長は、 この計画はゆくゆくは観光産業で長期採用の雇用を創出するだけでなく、 建設段階でも何万人もの短期採用の雇用を創出するとして、 政府計画を歓迎している。

立法会議員のリー・チュク・ヤン職工会連盟(CTU)事務局長は、 この計画で短期採用の雇用が創出されることを認めつつも、 政府が長期的展望で失業率の低下を望むならば、 非熟練労働者の職業訓練をもっと改善することがより重要だとしている。

このように、 政府は香港観光業の物的整備を図る一方で、 観光も含めて中国本土からの来訪者の積極的な導入にも力を入れ、 この面からも景気のてこ入れを図っている。

アントニー・ルン財務長官は北京で8月22日、 より多くの本土旅行者の香港への来訪について、 中央政府との間で合意に達した。 内容はさらに事務当局間で詰められることになっているが、 合意内容には、 香港に来訪する本土旅行者の人数枠の拡大、 滞在期間の延長、 ビザの有効期間の延長、 申請手続きの簡略化等が含まれている。 本土からの観光旅行者の人数枠の拡大については、 現在の1日1500人を9月から2000人に増加させることで合意した。 また、 ビジネス・ビザについては、 現在の入境許可1回、 有効期間6カ月のビザを、 入境許可複数回、 有効期間3年のビザに切り替えることが検討されている。

ルン長官は、 来訪者の数を増加させることは香港の世界金融・貿易センターとしての地位を発展させることになるとし、 同長官と中央政府の合意については、 香港の経済界も歓迎している。

ちなみに、 7月の中国本土からの観光旅行者は約40万人で、 前年同月比で20%増加している。

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