上海では若手の専門人材が不足

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年11月

WTO加盟後における金融や情報などの分野での外資進出規制の撤廃を見込んで、世界の多国籍企業は、中国での投資規模の拡大や新たなビジネスチャンスを狙っている。北京のHorizon Research社が5000社の中国進出外資企業を対象に行った調査によれば、多国籍企業が中国で地域総括本部を設ける場合、最も理想的な都市の第1位は上海となっている。米国の「フォーチュン」誌の調査も、92%の多国籍企業が、今後数年のうちに、中国で地域総括本部の設立を考えており、具体的な設置都市に関しては、32%の企業が上海を第1の選択肢と見ている。それに対して、北京と深土川を第1の選択肢と考えている企業はそれぞれ15%および11%である。これは、上海が中国に対する海外直接投資の中心地となりつつあり、またこれまで華南地域で形成されてきた「世界の製造センター」も上海をはじめとする長江デルタ地域に移行しつつあることを示した。

ところで上海では、人材面での準備ができているのであろうか。上海は、中国で最も人材が集まる都市だと思われているようである。しかし、上海市政府の人事部門は、今後数年における高級人材の需要予測を発表し、専門人材の不足について警告を発した。

上海では、各種の専門人材は約113万人いるが、一万人の人口の中、専門人材は870人であり、先進国の水準を下回っている。第10次5カ年計画(2001年から2006年)の期間中に、上海が重点的に育成する情報、金融、自動車、生物医学、環境保全、物流などの産業においては、専門人材の不足が特に目立つ。2000年における上海の金融保険業の増加率は前年度より18.1%増加し、GDPに占める比率も前年度の14.3%から15.2%まで上昇した。しかし、上海では金融保険業の専門人材はわずか1万5000人余りであり、金融保険業の発展速度には追いつかない。また上海が目指している国際金融センターの目標とは裏腹に、国際金融業務に詳しい専門人材の不足はさらにひどい。

上海の人的資源の優勢は、主に伝統産業にある。一方、ハイテク・ニューテクの分野、例えば情報技術、バイオテクノロジー、新材料などの分野においては、専門人材がきわめて不足している。北京では、ソフト開発に従事する者は6万人余りもおり、全国同職種従事者の35%を占めている。しかし、上海の国家プロジェクトである浦東ソフト開発団地は、4000人以上のソフト開発技術者不足に悩んでいる。

上海では人口の高齢化が進み、若年層の人材が不足している。現在、上海では、35歳以下の若年層は全人口の39.41%しか占めておらず、全国平均よりも11%低い。専門的な学歴や資格をもつ技術人材の中では、35歳以下の者はわずか5.35%しか占めておらず、逆に55歳以上の者は33.55%も占めている。

上海市政府人事局によれば、専門人材の不足はすでに上海経済の一層の発展にとってネックとなっており、今後、上海市は高学歴者や専門人材の導入にさらに力を入れ、また、海外から留学経験やキャリアをもつ人材のUターンにも努めていく方針である。

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