(香港特別行政区)失業率、4.7%に上昇
―景気・労働市場をめぐる状況

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年11月

政府人口・統計局が8月20日発表した統計によると、 2001年5月ー7月期の失業率は4.7%で、 前月比で0.1ポイント上昇した。 失業率が上昇するのは2月発表の4.6%以来で、 横這いが続いた失業率は5カ月ぶりに上昇した。 失業者数は、 前期の15万7400人から16万5000人に増加した。 店舗、 レストラン、 ホテル等で失業の影響が最も大きかった。

一方、 カリー・ラム社会保障局長は8月18日、 失業者のうちで香港の社会保証制度の中核である包括的社会保障支援(CSSA)からの支給を受けている者は、 過去4カ月間で5%増加し、 2万4000人になったと発表した。

これらの統計発表は、 8月になって景気・雇用についての楽観的でない見通しが相次いで表明された後で行われた。 まず、 8月初めに香港の有力諸銀行(HSBC等)が、 主に米国の景気減速との関係で、 香港の年間経済成長は政府予測の3%を下回って2%以下になると予測し、 同様に一部の有力エコノミストも、 経済成長率は2%まで低下するとして、 景気の減速を予測していた。 次いで政府の側からは、 ドナルド・ツァン政務官が8月16日、 香港経済の構造転換との関係で、 公共部門の余剰人員整理が不可欠になるだろうと述べ、 また、 政府高官の経済成長の下方修正発言を受けて、董建華長官が8月17日、 先進国の景気減速の影響で香港の景気がさらに減速し、 失業率も上昇することになろうと警告を発した(すでに政府は5月に、 3月の予算で予測した経済成長4%を3%に下方修正していたが、さらに7月末にはアントニー・ルン財務長官が再度の下方修正を示唆していた)。

このような有力エコノミストや政府要人の発言の後で、 政府発表で失業率が5カ月ぶりに上昇しただけに、 8月の統計発表は以下のように厳しく受け止められている。

まず、 ルン財務長官は、 最近の香港の雇用市場の悪化には二つの要因があり、 一つは先進国の景気減速など香港を取り巻く外部的状況であり、 他の一つは香港経済が工業主導型から知識主導型の経済に構造転換を図っている内部的状況であるとしている。 そして同長官は、 2002年には香港経済は回復基調に転ずる可能性があるが、 それまで失業率は向こう数カ月間さらに上昇するだろうとしている(失業率はアジア金融危機の煽りを受けて1999年2月に6.5%に達して最悪を記録した後、 2000年に入って一時的な改善を示したが、 その後、 今年になってまた上昇に転じていた)。

また、 経済・金融論専門のシティー大学のジミー・ファン助教授は、 香港経済が米国経済に直接結び付いていることを重視して、 厳しい見通しを示している。 すなわち同助教授は、 米連邦準備制度理事会の今年に入ってから6回の金利引き下げにもかかわらず、 米国経済が減速していることの煽りを受け、 また香港の不動産市場等の低迷からも、 失業率は年末には5%に達するだろうとしている。

さらに、 職工会連盟(CTU)のエリザベス・タン執行部代表は、 このような失業率上昇のもとでの使用者側の行動を批判し、 多くの労働者は雇用の保証と引き換えに賃金の減少に甘んずる用意があると表明しているのに、 使用者は雇用の削減を有利と見てそれを実施しているとしている。 また同代表は、 この状況はさらに1、 2年続き、 解雇を免れる者も仕事量と労働時間の増加を強いられるだろうと、 懸念を表明している。

このような統計発表を受けて、 その後厳しい失業状況との関連で、 労働側と政府側から以下の動きが出ている。

労働側の提言

CTUのリー・チュク・ヤン議員を中心とする立法会議員は、 政府に対して8月24日、 政府準備金から416億ドルを支出し、 減速する経済のてこ入れをして、 3万人の雇用を創出すべきだと提言した。

この提言でリー議員等は、 政府が職業訓練計画資金として100億ドル、 インフラ整備計画の早期着工と雇用創出措置のために100億ドルを支出し、 また、 非熟練労働者を環境改善、 ビル管理の職に就かせるために20億ドルを支出すべきだと要求している。 さら提言は、 低迷している香港不動産市場との関係で、 公共住宅の賃借料の30%削減等を政府に要求している。

リー氏は、 この政府支出は香港市民の短期的な経済的困難の克服に役立つとし、 また、支出額は政府準備金4300億ドルの十分の一にも満たないから、 政府の支出は可能であるとしている。

政府側の支援計画

準政府機関「雇用者再訓練会議」は8月27日、 失業者に対する財政的援助と自営業設立訓練のための「自営業設立支援計画」を発表した。

この計画では、 自営業の再訓練計画課程を修了した者は、 政府を保証人として、 26の金融機関から貸付けを受けることができる。 政府は、 貸付金の返済不能の場合、 その70%までを保証する。 貸付金の限度額は10万ドルに制限されるが、 訓練課程の修了者は、 共同して一つの企業登録を行うことも可能で、 この場合の貸付金限度額は30万ドルとなる。 自営業の職種に制限は付されない。

この計画は2年間継続し、 政府はこのために5000万ドルの支出を充て、 募集は9月3日から行われる。

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