失業率4.9%に上昇

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年11月

労働省は2001年9月7日、8月の失業率が4.9%(7月は4.5%)に上昇し、1997年9月以来約4年間で最も高い水準に達したと発表した。非農業部門の雇用者数は前月比11万3000人減少した。特に製造業雇用者数は、前月比14万1000人減(13カ月連続の減少)、サービス業では政府部門などで雇用増があったものの、前月比2万3000人増にとどまり、雇用を支えてきたサービス業にも勢いがなくなりつつある。中でも小売業(2万6000人減)・運輸では人員削減が目立っており、今後の雇用増も期待しにくい。

商務省は8月末に、速報値で年率0.7%とされた2001年第2四半期GDP成長率を0.3%に改定した。これは、0%成長と統計上ほとんど有意な差がない。過去1年間では成長率は1.2%にとどまったが、これは1990年から1991年までの景気後退期以来最も遅い成長である。(なお、9月に確定した第2四半期GDP成長率は0.3%と8年ぶりの低水準で、第1四半期の1.3%から1ポイント低下した。)

4.5%から4.9%への変化は急だが、多くのエコノミストによると、失業率統計は時に過敏に振れることもあり、数カ月の動きを見ないと確かなことは言えない。多くのエコノミストは、失業保険給付受給申請者数の増加が続いていた一方で、4月から7月までの失業率が、4.4%ないし4.5%で安定し、失業率が上昇しないことに驚いていた。

通常は、最も教育水準の低い労働者が初めに解雇される。ホワイトカラー不況と言われた1990年から1991年でも最初に解雇されたのは、人種的少数派の労働者と低技能労働者であった。今回の景気減速では、小売店や病院が比較的技能の低い労働者を雇用し続けていたが、サービス業の雇用情勢悪化に伴い、低技能労働者の働き口が減少し、ようやく通常の景気減速時の人員削減パターンが現れ始めている。

8月の4.5%から4.9%への失業率上昇に大きく寄与したのは、若年労働者と低技能労働者の失業率上昇である。例えば、低賃金労働に甘んじることが多い黒人女性の失業率は8月に0.9ポイント上がり、6.9%になった。25歳以上の高校中退者の失業率は、8月に0.7ポイント上昇して7.3%に達した(過去1年間で1ポイント上昇)。

一方、ドットコム企業の破綻や、製造業における技術者の解雇などにより、大卒者の失業率は2001年前半の数カ月に0.7ポイント上昇したが、8月には2.1%で前月と変わっていない。

ハーバード大学のローレンス・カッツ教授は、もしも低技能労働者の求人減少がさらに進んだ場合、福祉改革による生活保護削減で労働市場に参入した労働者に最も大きな影響を与える可能性があり、特に、勤続年数が短いため失業保険給付受給資格がない労働者が、仕事もセーフティネットもないという状況に陥るのではないかと危惧している。

ブッシュ大統領は、失業率の悪化を懸念し、何らかの対策を取る意向を表明した。しかし、その後、同時多発テロの影響で、航空業界を始めとするサービス業や製造業での人員削減、米経済を支えてきた消費意欲の減退が不可避となっている。

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