堅調な中小企業が支える雇用

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年10月

GE、インターナショナル・ペーパーなどの耐久財製造大手が人員削減を発表する陰に隠れて目立たないが、同じ耐久財製造産業でも中小企業では雇用が維持されている場合が多い。

たとえば、ペンシルヴァニア州南西部には約4000の製造業者があるが、そのほとんど全てが500人未満の従業員を雇用している。各社は小規模だが、合わせて約17万人を雇用しており、その大部分は株を公開していない。人材派遣業のマンパワー社によれば、ほとんどが耐久財を製造するこれらの中小企業の60%が2001年第3四半期に人員増を計画している。景気が悪くなっても、近年、人手不足が続き、採用と訓練に多額の投資をしてきたため、これまで雇用してきた従業員を簡単には解雇できない。また、景気が良くなった時に再び優れた労働者を雇うことができるか心配でもある。人員削減をしなければならない中小企業もあるが、大手株式公開企業とは異なり、株主の意向に左右されず、長期的な視野に立って経営を行い、安定した労働力を維持する傾向がある。間接費(overhead)削減に熱心で、日頃から景気悪化に備えた経営を行っている企業が多いことも特色のひとつである。

ペンシルヴァニア州南西部では、USスティール社、アルコア社、ウエスティングハウス社などが経済の中心にあったが、ここ2,30年でウエスティングハウス社が町を去り、鉄鋼業も不振になった。しかし、これらの大手企業の専属的な下請けでもあった中小企業は、費用削減のための新技術開発によって時代の移り変わりに耐えてきた。

そうした企業の1つ、イクストルード・ホーン社は、飛行機エンジンなどの粗い縁(端)を滑らかにする機械を作っている。同社は、機械部品メーカーとしては、非常に高い率である、売り上げの15%を研究開発に当てている。同社は今、好景気の間には機械部品メーカーで働こうとは思っていなかったコンピュータ・ソフトウエア技術者、治金学専門家などを雇っている。大手の活発な人員削減は、中小企業に好い雇用機会をもたらしているのである。

こうした無名企業が、全国の製造業の雇用者の半分以上(約980万人)の労働者を雇用している。中小企業が人員削減を控えているため、消費意欲の大幅な低下に歯止めをかけている可能性も指摘されている。

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