中小企業への週35時間制の弾力的な適用に道を開くホテル産業協約

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2001年9月

ファビウス経済相は何カ月も前から中小企業の週35時間制について「柔軟な適用」を主張してきたが、6月15日にホテル・カフェ・レストラン業(HCR:17万5000企業、従業員70万人)で調印された協約はその意向に沿ったものになった。

経済相は最近も、割増賃金と引き換えに年間の時間外労働枠(この枠を超える時間外労働は代償休日の対象となる)を130時間から180時間へ拡大するように提案するなど、中小企業が2002年1月1日に労働時間を短縮する場合の負担軽減を図るための、一連の措置を、ジョスパン首相に提示している。

こうした状況を踏まえて、ギグー雇用相は、中小企業が労働時間を短縮することの難しさを認めるとともに、「中小企業のために法律によって用意されている柔軟化」と名づけられたカードが配られることになった。このため、法律で定められている採用数(注1)を協約が遵守しない場合でも、助成金が与えられる可能性がある。時間外労働の段階的な増加によって、中小企業は2002年に35時間を上回る時間を割当枠として数えることなく、週38時間30分以上の労働時間を実施することができる。

ほぼ2年間にわたる困難な交渉の末に、2つの労働団体(フランス民主同盟=CFDTおよび労働総同盟=CGT)と2つの使用者団体(ホテル業組合=SFHおよび全国喫茶店・レストラン・ホテル経営者組合=SNLRH)によって調印されたHCR協約は、道路輸送業に倣って、いくつかの重要な例外規定を手に入れた。たとえば、例外的な制度のために43時間に定められている労働時間が企業規模に応じて2段階で35時間に引き下げられる。すなわち、従業員20人を超えている場合には2004年1月1日、従業員20人以下ならば2007年1月1日である。

この延期は助成金の増額をもたらす。他の企業と異なり、週35時間制と結びつけられる使用者負担の軽減は週39時間へ移行したときに有効となるからだ。ギグー雇用相は方法についてこそ明らかにしていないが、週39時間から週35時間へと移行する第2段階の場合にも、新たな助成を約束した。また、現物給付の特典(食事)に対する負担の免除も全面的に認められ、2001年1月1日に遡って実施される。いまひとつ、ますます採用が難しくなっている産業部門を助けるために、特別の「付随制度」が実施される。

ギグー雇用相は、この協約を関連するすべてのHCRに義務化するために、7月12日に効力拡張を発効させたいと考えている。しかし、非調印のホテル業ユニオン(UMIH)(フランス企業運動=MEDEFのメンバー)はそれを望んでいない。この協約を少数派協約だとみなすUMIHはすでにコンセイユデタへの提訴を発表した。UMIHは時短の代償として付加価値税(TVA)の引き下げを要求しているが、協約調印後の助成が明確に定められていないと判断している。一方、労働者の力(FO)は賃金と関係する別の理由からだが、やはり反対の権利を行使している。

パトリア中小企業・手工業担当閣外相は、この協約が他部門の模範として役立つと考えており、協約を発効させることが難しかったパン製造業、時間外労働の管理が難しい自由業や土建業の職人部門に対しても「解決策」として追求していくつもりだ。

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