法定最低賃金(SMIC)の改定
政府は法定最低賃金(SMIC)を4.05%引き上げる方針を決定し、6月25日、ギグー雇用連帯相が主宰する団体交渉全国委員会(Commision national de la negociation collective)の席上、労使代表に伝えた。
フランスの法定最低賃金は、消費者物価と賃金購買力の動きをもとにした一定の計算方法に従い改定されるが、政府は、この自動的に算出される改定幅よりも高く決定できる権限を有している。今回、5月の消費者物価上昇率と1~3月期の賃金購買力の伸びから算定された自動的な改定幅は3.76%であったが、政府は、それに経済成長の報酬として0.29%上乗せし、過去10年間で最大の4.05%の引き上げを決定した。この改定により、法定最低賃金(税込み)は、週39時間労働者で、1時間当たり43.72フラン(月換算で7288.68フラン=約12万円強)となる。
今回の改定については、フランス経済が3年連続で3%前後の安定成長を達成していることから、その果実の分配として労働組合や左派政党は大幅な引き上げを要求していたが、政府は、物価上昇率は今後落ち着くと予想されることや雇用手当(注1)の支給が9月に始まることから、慎重な姿勢を崩さなかった。
なお、時短法第1法の発効から3年が経過した現在、すでに週35時間労働が適用された労働者については、その移行時期によって3つの最低賃金が並存する。これは、時短による最低賃金の目減りを避けるため、週35時間へ移行した労働者の最低賃金を移行時点の週39時間労働者の最低賃金に固定(月額ベース)するよう時短法で定めたことによる。したがって、週35時間労働者の最低賃金については、最終的に週39時間労働者のものに収斂させるため(時短法により2005年までに最低賃金の統一が義務づけられている)、改定率は低く設定される。今回も週35時間労働者については、改定率は政府の上乗せ分も含め2.85%とされた。これにより、たとえば、1999年7月~2000年6月までの間に週35時間へ移行した労働者については、月額7180.43フランとなる。
注
- 近年創出された雇用の大部分がSMICの1.3倍以下の賃金であり、また全国でこのSMICの1.3倍以下の賃金の労働者が40%程度を占めていること等を背景とし、低所得者家計を援助するとともに、雇用を促進するという目的で創設された。具体的には、家族の少なくとも1人が働いていて、かつ所得が一定限度内にある家計に支給される。これまで住宅手当名目などで低所得者家計を援助していたものを、雇用に関連付けて支給する形に改組したもの。このため、政府は400億フランの支出を決定している。(本文へ)
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